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OCW-S3400

― モジュール開発 編 ―

見た目のエレガンスはもちろん、 動きのエレガンスまで追求する。
高機能アナログウオッチにおける、 モジュール開発の使命について紹介します。

究極のエレガンスのために、
モジュール開発ができること。

—— マンタシリーズの最新作として登場したOCW-S3400。
そのモジュール開発について、3人にお話を伺いました。

 小島: OCW-S3400は、ブランドを象徴するマンタシリーズとして、オシアナスのアイデンティティであるエレガンスを追求したモデルです。
モジュール開発部では、さらなる薄型化、ベゼル肩までの高さを8mm台に抑えようという開発目標を立て、仕様設計の流田、実装開発の横尾とともに、S3400用のモジュール開発を行いました。

 流田: 仕様設計は、様々な機能をどういうボタン操作、どういう針の動きで表現し、商品に落とし込んでいくかが腕の見せ所。
チーム内はもちろん、商品企画やデザイン部門とも意見を出し合いながら、モジュールの仕様を決めていきます。
妥協点を探るのではなく、お互いにブラッシュアップを繰り返しながら、ウィンウィンになる形に仕上げていく。
すべての構成要素が密接に関係しているアナログウオッチには欠かせない作業になります。

 横尾: 実装開発では、モジュールに搭載する部品の設計やレイアウトを行います。
パーツの試作をメーカーに発注し、動作などの検証を行い、モジュールとして形にするのが主な役割です。
OCW-S3400では、目標としてモジュールサイズを大幅に薄型化する必要がありました。
同時に、文字板の質感にもこだわるなど、いつも以上に求められるハードルが高かったというのが正直な感想ですね。

モジュール開発部:小島 直モジュール開発部:小島 直

—— 小島さんは、OCW-G1100のモジュール企画にも携わっておられます。
モジュールを開発するうえで、2モデルにはどのような違いがあるのでしょうか。

 小島: 同じオシアナスでも、OCW-G1100とOCW-S3400では、まったく性質が異なります。
G1100はどちらかといえば機能を前面に押し出したモデル。
一方、S3400は、究極のエレガンスを目指して質感を追求したモデルです。
そのため、モジュール開発のベクトルもかなり違いますね。
とくに、今回のOCW-S3400では、思い切った薄型化を実現するため、ほとんど新規といってもいいくらいモジュールの設計を見直しました。

 流田: 逆に、仕様設計の面では、ワールドタイムの使い勝手をなるべく統一するよう心がけました。
同時期に発売される同ブランドのモデルなので、ユーザーによりわかりやすい形で提示するのがベストだという判断ですね。
そのかわり、前作のOCW-S3000とは、大きく異なる仕様になっています。
これについては、後ほどくわしくお話します。

モジュール開発部:流田 寛史モジュール開発部:流田 寛史


さらなる薄型化に応える。
実装開発の努力の結晶。

—— 薄型化のためほぼゼロベースで設計されたというモジュールですが、開発にはどのような苦労がありましたか。

 小島: OCW-S3400は、従来に比べてケース厚で約1mmスリムになっています。
当然、ケース内に搭載されるモジュールも薄くなっています。
この薄型化という課題に対しては、実装開発が担う役割がかなり大きかったですね。

 横尾: 薄型化には、どうしても物理的な制約がつきものです。
機能を絞って部品点数を減らし薄型化することもできますが、フラッグシップモデルとしてそれは許されません。
ひとつひとつの部品を見直し、不要な部分を削っていくという作業が必要になってきます。
コンマ単位の積み重ねで、トータルの薄型化を実現しています。

OCW-S3000(左)とOCW-S3400(右)OCW-S3000(左)とOCW-S3400(右)

—— なかでも、薄型化にもっとも貢献したパーツはなんですか。

 小島: 一見しただけでは、どのパーツも違いがわかりづらいのですが、部品を載せるメインプレートは、見た目でわかるくらいに薄くなっています。
同じ素材、同じ機能を持つパーツで、ここまで薄くできたのは、実装設計の努力のたまものといっていいのではないでしょうか。

 横尾: モジュールの土台となるパーツなので、強度を保ちながら、ギリギリまで薄くできるよう設計しました。
あまり薄くすると、今度は樹脂成型ができなくなるので、そこはせめぎ合いですね。
量産化の工程を視野に入れながら、緻密に計算、解析を繰り返し、最適な肉厚に仕上げています。
また、基盤の上に配置するサブプレートも薄くなっています。触ってみないとわからないくらいの違いですが……。

 小島: OCW-S3000のときにも薄型化に関しては、限界近くまで攻めたのですが、今回はさらに上をいく薄型化に挑戦しました。
かなりハードルの高い要求でしたが、なんとか完成にこぎつけることができました。

OCW-S3000(左)とOCW-S3400(右)のメインプレートOCW-S3000(左)とOCW-S3400(右)の
メインプレート

—— 部品の小型化・薄型化のほかに、レイアウトという点では、どのような苦労がありましたか。

 小島: カシオが得意とする高密度実装技術により、搭載部品のすべてを限られたスペースに収めています。
なかでもモーターの位置は、針軸の位置に影響を及ぼすため、レイアウトには高い精度が求められます。
実装の都合でモーターの位置をずらすと、針の配置などデザインも変更しなくてなりませんので。

 横尾: その点では、前の部署で文字板などの外装設計を担当していたときの知識が役に立っていますね。
ほんの小さなことが、時計全体の品質に関わってくる。
そこが、実装開発の難しさでもあり、面白さでもあると思います。

 小島: 省スペース実装という面では、新開発のデュアルコイルモーターの採用も大きいですね。
これは、後で述べるようにワールドタイムの実用性を高めるうえで重要なパーツですが、部品の最適配置という意味でも役立っています。

 横尾: デュアルコイルモーターには、ストレートとスクエアの2つの形状があり、設置場所にマッチした形状を選ぶことができます。
今回は、モジュールの隅に配置するのに適したスクエアタイプを採用しましたが、すんなり配置できたわけではありません。
実際には難解なパズルを解くような一筋縄ではいかない作業でしたね。

モジュール開発部:横尾 一将モジュール開発部:横尾 一将

モジュール開発部:横尾 一将モジュール開発部:横尾 一将


変わらないもの、変わるべきもの。
進化するユーザビリティ。

—— ワールドタイム用に搭載したデュアルコイルモーターのお話が出たところで、機能面について話題を移すと、インダイアルの配置がOCW-S3000とは大きく変わりましたね。

 流田: OCW-S3000では上下にインダイアルを配置していますが、これは、ホームタイム、ワールドタイム、ストップウオッチの3モードを同時に使用できるという商品コンセプトに基づいています。
一方、OCW-S3400では右に大きくインダイアルとAM/PM表示を配置し、よりワールドタイムのユーザビリティを高めるスタイルに変更しました。
また、りゅうずを一段引くとワールドタイムの設定、2段引くとホームタイムの設定ができるのですが、りゅうずのすぐ横にインダイアル、その延長線上に時分針があり、機能と操作系の位置が連動しているため、使い方が直感的にわかります。
左下のモードボタンの近くにモードダイアルを配置しているのも同じ理由ですね。

OCW-S3400のインダイアルレイアウトOCW-S3400のインダイアルレイアウト

—— 文字板レイアウトの変更に伴い、モジュールの仕様も大きく変わったのでは。

 流田: もちろんです。時刻表示に最適化するため、ストップウオッチ用のモーターを廃止し、5モーター構成にしました。
その代わり、ワールドタイム表示用に新しく採用したのが、デュアルコイルモーターです。

 小島: このモーターは、従来のシングルコイルモーターに比べ高速回転できるのが最大の特長。
この特性を活かして、針の動きに緩急をつけることで、表現の幅を広げることが可能になりました。
モジュール開発部みんなで意見を出し合い、オシアナスらしさを表現するために、落ち着きやゆとりを感じさせる動きを追求。
その結果、針の動きにまでエレガンスが感じられる仕様になっています。

 流田: 針の動きのこだわりは、緩急だけではありません。
たとえば、ワールドタイムの都市入替を行うとき、はじめに秒針が都市コードを指し示してから、各針が動き出し時刻を表示します。
すべての針が一度に動くと、どこを見てよいかわからなくなりますが、このように2つの動作に時間差を設けることで、ユーザーの視線を誘導することができ、機能にストーリー性が生まれます。

デュアルコイルモーターデュアルコイルモーター(下端)

—— 針の動かし方ひとつで、機能は無機質にもなり、情緒的にもなり得るということですね。

 小島: 動きのほかには、見た目の質感で視認性を高める工夫もしています。
OCW-S3400では、遮光分散型ソーラーパネルの採用と文字板に配置する加飾パーツの抑制で、従来のOCW-S3000よりもさらに発色の良い文字板を実現しました。

 横尾: ソーラーパネルは、OCW-S3000と同じ遮光分散型ソーラーパネルを使用していますが、セル分割線のデザインを変え、より無駄の少ない形状になっています。
性能はほぼ同じなのですが、万一、文字板からソーラーパネルが透けて見えてしまったとき、少しでも見栄えのよい方がいいだろうと。
ほとんどあり得ないケースではありますが、何事にも万全の備えをしたくなるのは、実装開発の“業”のせいかもしれません。

OCW-G1000(左)とOCW-S3400の文字板の質感の違い遮光分散型ソーラーパネル
(左:OCW-S3000 右:OCW-S3400)
S3000に比べ、より直線的なデザインになった

 小島: ともあれ、文字板の発色を高めることで、針や時字が引き立ち、時刻表示がより見やすくなったのは間違いありません。
今回のようなシンプルな文字板の場合は、その効果がとくに顕著に現れていると思います。
モジュールの1パーツであるソーラーパネルが、製品全体のイメージを左右する。
だからこそ、われわれモジュール開発部としても、挑戦をやめるわけにはいかない。
OCW-S3400を手にとるファンの方には、そんな想いもいっしょに感じてほしいですね。

—— マンタシリーズの原点である薄型化への挑戦と、さらなるユーザビリティの向上。そして、動きにまでエレガンスを追求する姿勢。
それを支えるモジュール開発部のあくなき信念のなかに、マンタシリーズの本質を見た気がします。
とかく見た目の美しさにのみ目が奪われがちなアナログウオッチというジャンルのなかで、デジタルだからこそできる表現の可能性を追求し、独自の価値を創造し続けるマンタシリーズ。
OCW-S3400の登場で、その進化はさらに加速するに違いありません。

OCW-S3400の詳細を見る


モジュール開発部:小島 直

モジュール開発部
小島 直

ソフト設計を経て、モジュール企画に。タフムーブメントの開発などを手がける。入社のきっかけは、当時所有していたデータバンク。自分が欲しいと思う商品を作れる、自由な社風の会社だっからだとか。プライベートでは、剣道5段の腕前。オシアナスのコーディネートは、スーツやジャケットに合わせるのがおすすめ。思い入れのあるモデルは、はじめてモジュール企画として担当したS3000。

モジュール開発部:流田 寛史

モジュール開発部
流田 寛史

2008年からオシアナスの開発に携わる。最初に担当したOCW-S1200は、今でも思い入れがあるのだそう。休日は主に自然の中へ。船舶免許を持ち、サーフィンもこなす海の男。最近のお気に入りはSUP(スタンド・アップ・パドルボード)。街に出かけるときは、OCW-S2400を着用しているとのこと。

モジュール開発部:横尾 一将

モジュール開発部
横尾 一将

外装設計で数多くのモデルを担当し、OCW-S3400から実装設計担当としてモジュール開発に携わる。開発者としての視野を広げるため、自ら異動を志望したという。休日はもっぱら家族サービス。3才の愛娘と遊んだり、家事を手伝ったりと、イクメンぶりを発揮する。お気に入りの1本は、OCW-S2400。