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OCW-G1100

― デザイン・外装設計 編 ―

オシアナスといえば、 エレガントなスタイリングと独創的な青の表現。
機能美を生み出す発想と、 それを形にするための 新たな試みについて紹介します。

ハイエンドモデルに
ふさわしい機能と美を目指して。

—— フルメタルGPSハイブリッド電波ソーラーの魅力のひとつ。
持つ人の感性を刺激する機能美は、どのように生まれたのでしょうか。

矢田部: 今回は新規モジュールでしたので、どんなモジュールにするか、文字板の大まかなレイアウトからデザインしました。
インダイアルをどう並べるか、インデックスの形状はどうするかなど、ラフスケッチを何枚も描き、大枠のレイアウトを決めていきます。
その後、デザインイメージを膨らませ、文字板とのバランスを見ながらおおまかなケースやバンドをデザインします。

 稲葉: この概略デザインは、イメージを決めるためだけでなく、モジュールを設計するための基本資料となるものでもあります。
見切り径、針軸の位置、時字の高さや針の長さなど、文字板を詳細にデザインする際に必要な要素は、内部に搭載するモジュールの仕様に大きく依存します。
しかし、モジュール開発にはどうしても時間がかかってしまう。そこで、概略デザインを先行して作成し、コンカレントな開発ができるようにしています。

矢田部: モジュールの仕様が決まると、より詳細なデザイン作業に移ります。
文字板を構成するひとつひとつのパーツに関して、サイズ、配置、素材、造形、仕上げなどを、細かく作り込んでいきます。
各部署とその都度やりとりしながら、最終的には100分の5ミリの精度で設計図に落とし込みます。

デザイン開発部:矢田部 孝司デザイン開発部:矢田部 孝司

—— デザインや外装設計を進めるうえで、チーム内ではどのような方針があったのでしょうか。

 稲葉: GPSハイブリッド電波ソーラーとして、機能をデザインでどう表現するか。
ポイントとなったのは、やはりワールドタイムの表示ですね。
今回は新開発のデュアルコイルモーターを採用していることもあり、6時側のインダイアルに力を入れています。

矢田部: 具体的には、インダイアルリングをブルーで強調し、AM/PMと組み合わせてレイアウト。
小針も立体形状にし、蓄光を施すなど、“もうひとつの時計”としてきちんと機能するデザインを心がけました。
細部までとことんこだわって作り込んでいます。
また、12時間制の表示にすることで、より直感的な時刻確認を可能にするなど、ユーザビリティの面でもOCW-G1000との差別化を図っています。

 稲葉: 時分針はもちろん、小針のような極小部品は加工が難しいだけでなく、高さや重量バランスの許容範囲も限られます。
しかし、外装設計としては、量産化に見合う製造工程で、品質評価基準をクリアする必要がある。
そんな制約の中で、デザインの要望通りのものを仕上げるのには苦労しました。

蓄光塗料の厚みでさえ、製品サイズに影響が出るので、手作業で塗料を削り取る工程を増やすなど、パーツひとつひとつに今までにない時間と手間がかかっています。

外装開発部:稲葉 友洋外装開発部:稲葉 友洋

6時側インダイアル6時側インダイアル

原寸の10倍で描き起こされた時針のデザイン画原寸の10倍で描き起こされた時針のデザイン画


素材からこだわる。
オシアナスブルーの新たな挑戦。

—— 毎回ブルーの表現にこだわるオシアナス。
OCW-G1100では、どのような挑戦があったのでしょうか。

矢田部: オシアナスブルーに関しては、見せ方も含め、常に新しい表現方法を考えています。
今回は“AIR GLOW”という地球を取り巻く大気が太陽光によって光る大気光をイメージして、サファイアガラスベゼルリングという新たな試みにチャレンジしました。
サファイアガラス素材に蒸着を施すことで、IP処理では表現できない透明感のあるブルーを目指しました。

サファイアガラスの底面にブルー蒸着を施すことで、見る角度や光の当たり具合で表情が変わるので、色味については様々なパターンで検証しました。
その際、試作と量産とでサファイアガラスに着色したときの色味が微妙に違ったため、イメージ通りの色味に合わせるため調整には最後まで苦労しました。

 稲葉: 構造的には、土台となるコの字型のメタルパーツに、リング状のサファイアガラスを落とし込むかたちにしています。
風防に使用するサファイアガラスより大口径で、そのぶん加工も難しい。
使用するサファイアインゴットも、より大きなものが必要になります。

サファイアガラスベゼルリングサファイアガラスベゼルリング

—— 風防とベゼルにサファイアガラスを使うことで、
フェイス全体に統一感が生まれていますね。

矢田部: ベゼル部分までフェイスとして見せるというのも、今回の狙いのひとつです。
そのため、風防とベゼルが連続した面に見えるよう工夫しています。
ひとつは、風防のカーブに合わせて、リングの天面を斜めにカットしたこと。
もうひとつが、風防との境界部分をできるだけ細くし、さらにグレーIPを施したことですね。

 稲葉: これを実現するために、メタルパーツの特定部分にのみIP処理を施すIP分けという技術が使われています。
手塗りでコーティングしてマスキングを行い、IP処理を施した後、コーティングを剥がすという手間も時間もかかる高度な技術です。
また、メタルパーツの肉厚も極限まで薄くしました。
時計の気密性に関わる部品なので、慎重に限界を探っていきました。

—— また、サファイアガラスベゼルは、青と黒で色分けされていますね。

 稲葉: 時差が「+」の部分を青、「−」の部分を黒で表現し、時差表示と連動したカラーリングになっています。
ちなみに、右半分の青は蒸着ですが、左半分の黒や時差表示のグレーは印刷で色をつけています。

—— オシアナスブルーを表現するために、素材にこだわるだけでなく、GPSハイブリッド電波ソーラーならではの機能をカラーに取り入れるなど、ベゼルひとつにもいろいろな意味が込められているのですね。

土台の内周部分にグレーIPを採用土台の内周部分にグレーIPを採用


斬新な発想と、それを形にする技術。
時字に込められた想いとは。

—— 新しい青の表現と並び、フェイスの立体感も印象的です。デザイン面での苦労も多かったのでは。

矢田部: 文字板デザインの手法として、レイヤーで奥行き感を出すのではなく、立体的な構造物の配置で構成したのが特長です。
もっとも苦労したのは、高さのある時字。
とくに12時位置の別体構造は、ラフスケッチでいくつもアイデアを出し、外装設計と相談。
全体のバランスを見ながら、イメージを固めていきました。

 稲葉: 当初は、山形カシオの微細加工技術で金型を起こし、樹脂を成型して作る予定でした。
複雑な造形を精密に仕上げるのに適した技術です。
最終的には、ハイエンドモデルとしての高級感を出すため、メタルを使うことに。ひとつひとつ削り出しで加工して、シャープに仕上げています。
デザインの要求レベルがかなり高く、それを実現するために試行錯誤を繰り返しました。
自分でいうのもなんですが、ここまでやるかというくらい作り込んでいます。

矢田部: 今までの立体時字とは、比べ物になりませんね。
一度フラットに立ち上げてから斜面を形成。
外周方向に向けて高さを出し、文字板上で円錐状になるよう配置しました。
高さは、従来の2倍以上。さらに、輝きを増すために角を面取りしています。
カットする面ごとに別の機械で加工するため、そのつど手作業でセットする必要があり、形状を複雑にすればするほど、工程にも手間がかかります。

 稲葉: 蓄光も太く、押し出し感が強い。スパッタリングの上に直接蓄光を塗ると、下地が透けて見えるため、白インクで下打ち印刷してから蓄光を埋めています。
もちろん、すべて手作業ですね。

—— わずか数ミリの金属部品とは思えないですね。

 稲葉: 小さいとはいえ、今までより大きく重量もある。
設計の許容値内に収めるのは大変でした。
正直、ここまでやるメーカーはあまりないのではないでしょうか。

矢田部: 機能時計はデザインが煩雑になりがちなので、なるべくシンプルになるよう心がけました。
そのぶん、ディテールには妥協なし。
時字以外にも、秒針に甲丸立体針を使用したり、針軸にサファイアをセットしたりと、随所にOCW-G1000にはなかった新しい試みを盛り込んでいます。

 稲葉: バンドも中駒の仕上げを変え、ミラーとヘアラインで磨き分けています。
中留は、スライドアジャスト機構を搭載しながらサイズ感をキープし、刻印カバーを無垢材から削り出して作るなど、デザインの要求はありとあらゆるところにまで及ぶので、外装設計としてそれに応えるのは非常に苦労しましたね。
すべてが真剣勝負。その結果、贔屓目なしで、いいものができたと実感しています。

針軸にサファイアを採用した甲丸立体針針軸にサファイアを採用した甲丸立体針

凹凸のある中駒と削り出しの中留凹凸のある中駒と削り出しの中留

—— できるかぎり最上の素材、造形、仕上げで勝負するデザインと、それを量産・品質工程まで見据えて製品化する外装設計。
両者のせめぎ合いで完成したのがOCW-G1100。
「常に、今までよりいいものを作りたい」と語る矢田部さんと稲葉さん。
二人のものづくりの信念のようなものが感じられます。
サファイアベゼルリングが放つ青の存在感や、高時字の作り込みなど、ディテールの隅々まで目をこらし、そのこだわりぶりを実感してみてはいかがでしょうか。

OCW-G1100の詳細を見る


デザイン開発部:矢田部 孝司

デザイン開発部
矢田部 孝司

カシオ製品のデザインを幅広く手掛け、フリーランスで活躍していた経歴も持つ。オシアナスはOCW-S2400B、OCW-G1000Eなどの限定モデルを担当。フルモデルのデザインはOCW-G1100が初となる。趣味は主に映画鑑賞。昔は空手をやっていたこともあるという。思い入れのあるモデルはなんといってもOCW-G1100。実際の価格よりさらに数万円高い商品の気持ちでデザインしたので見応えはあるとのこと。

外装開発部:稲葉 友洋

外装開発部
稲葉 友洋

モジュール開発部を経て外装設計へ。工業デザインのかっこよさに魅せられたという。OCW-T1000を皮切りに、S3000、T2600、G1000などの開発に携わる。休日は、ゴルフ三昧。練習に1日3回行くこともあるという猛者。オシアナスはOCW-S100やS3000が好きだが、思い入れがあるのは今回のOCW-G1100。ほかにはマネできない作り込みに自信たっぷり。とくにベゼルの青と高時字は一見の価値あり。