

平間至。その名前を聞いたことがある人にとって、この名はファッションフォトグラファーとして時代を駆け抜けた存在として認識されているだろうか。はたまた、某大手レコードショップの「NO MUSIC, NO LIFE.」を撮り続けている写真家としてや、様々なミュージシャンとの仕事でその存在を知っているだろうか。
1980年代から、日本の広告・ファッションの分野でトップランナーとして走り続けてきた平間至氏。そんな彼が「平間写真館TOKYO」という館を構え、被写体を一般人にも移したのは2015年になってからだった。
「商業としての写真は、被写体であるモデルの向こうにアートディレクターや編集者、クライアントがいて、その意向に沿って写真を撮っていきます。ところが写真館で撮る一般の人は、被写体自身がクライアントであり鑑賞者でもあるというところが大きな違いです。“人を撮る”という基本は変わらなくても、写真家に求められるものや、その時の被写体との関係性は全く異なる面白さがあります」。
そしてもう一つ、平間氏の大きな変化はデジタルカメラを使い始めたことだ。
「アナログの写真は撮影してフィルムを現像し、プリントするという工程自体が面白いと考えていました。撮影している瞬間はカメラマンにしかわからないというか撮っている自分でさえ、多分こう写っているだろうという予測する感じがスリリングでもあり、また現像やプリントの過程でも様々な変化が楽しめるという、フィルムで撮るアナログの魅力には捨てがたいものがあります。ただ一方で、最近のデジタルカメラの進化は、よりアナログ的になっている。つまり、なめらかな表現もできるようになっていると感じていて、それぞれの良さを自分の撮影の中で使い分けるようになりました」。
そんなデジタルカメラで撮られた、写真館でのポートレートを集大成した写真展が現在、東京新宿で開かれている。
「“平間至写真館大博覧会”というタイトルです。僕自身が宮城・塩竈に祖父が開業した平間写真館に生まれ、その反抗心が初期のモータードライブを使った写真だったのですが、震災を経て写真の中に一人一人の存在を残せるのではと考え、写真館を東京にオープンさせました。その一つの区切りとしての写真展です。ここでの写真は、デジタルで撮影され、それをアナログの時から使われている銀塩プリントにレーザーで焼き付けるという手法で展示しています。アナログの感覚とデジタルのテクノロジーのいいとこ取りですね」。
かつての精緻すぎるきらいがあったデジタル写真も技術の進歩でより深みなる表現が可能になり、平間氏の思い描く写真がそこに生まれるようになったのだ。
「この時計も同じように感じました。実は長いこと腕時計をしてこなかったのですが、このOCEANUSは久しぶりに自分にフィットする時計だと感じました。というのも見た目のアナログ感と、その裏で精密に動きつつもデジタルを感じさせない雰囲気が、今の自分にはちょうどいいと思えたのです」。
フィルムというアナログ時代に育ち、アナログの良さを知り抜いた上でデジタルの時代へと軽やかにスライドする平間至という写真家。音楽を愛し、人を愛し、写真を愛する一人の作家としても、平間氏の紡ぎ出す世界はどこまでもあたたかく、見る人に訴えかけてくる。
OCEANUSもデジタルという心臓を持ちながら、あくまでアナログとしての顔で時を知らせ、移り行く時代を刻み続けて行く。
写真と時間。一瞬を捉えながら、その一瞬の中に永遠を垣間見せる。OCEANUSもそんな存在でありたいと願う。
Text: Y.Nag |
平間至
1963年、宮城県塩竈市に生まれる。日本大学芸術学部写真学科を卒業後、写真家イジマカオル氏に師事。写真から音楽が聞こえてくるような躍動感のある人物撮影で、今までにないスタイルを打ち出し、多くのミュージシャンの撮影を手掛ける。近年では舞踊家の田中泯氏の「-場踊り-」シリーズをライフワークとし、世界との一体感を感じさせるような作品制作を追求している。2006年よりゼラチンシルバーセッションに参加、2008年より「塩竈フォトフェスティバル」を企画・プロデュース。2009年よりレンタル暗室&ギャラリー「PIPPO」をオープンし、多彩なワークショップを企画する等、フィルム写真の普及活動を行っている。2013年には、俳優・綾野剛写真集「胎響」(ワニブックス)や、田中泯氏との写真集「Last Movement-最終の身振りへ向けて-」(博進堂)の発表と共に個展も行い、大きな注目を集めた。2012年より塩竈にて、音楽フェスティバル「GAMA ROCK」主催。2015年1月三宿に平間写真館TOKYOをオープンする。
平間至写真展
「平間至写真館大博覧会」
■東京会場
会場:ニコンプラザ新宿 THE GALLERY
新宿エルタワー28階 ニコンプラザ内
東京都新宿区西新宿1-6-1
会期:2019年1月5日(土)~1月28日(月)
開館時間:10:30~18:30(最終日は15:00まで)
定休日:日曜日
観覧料:無料
■大阪会場
会場:ニコンプラザ大阪 THE GALLERY
ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
大阪市北区梅田2-2-2
会期:2019年3月28日(木)~4月10日(水)
開館時間:10:30~18:30(最終日は15:00まで)
定休日:日曜日
観覧料:無料
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