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BLUE MOTIONSEarly Summer 2018 issue
MOVE FORWARD
未踏への一歩を

Next Wave

江戸から東京へ。 革新し続ける 伝統工芸・ 江戸切子

堀口徹氏(三代秀石)

エレガンスとテクノロジーの融合を象徴する「Manta」のNEWモデルとして、6月8日に発売されたBluetooth®搭載電波ソーラー『OCW-S4000C』。その最大の特徴のひとつは、伝統工芸士・堀口徹氏による江戸切子細工の技法を駆使したサファイアガラスベゼルであろう。前回のBLUE MOTIONSでは、堀口氏にもご参加いただき、NEW Mantaの誕生秘話についてお届けしたが、今回はさらに深くお話をお伺いしたく、堀口氏の作業場である堀口切子へと足を運んだ。

江戸切子職人・堀口徹氏江戸切子職人・堀口徹氏

堀口氏の作品は、我々がイメージするいわゆる伝統的な江戸切子というよりかは、全く新しい印象を与える前衛的な作品が多い気がする。そのインスピレーションは、一体どこから生まれるのだろうか。
「実は、具体的にデザインなどの勉強らしい勉強をしたことはないんです。ただ、元々ある物をもう少しこうしたらより良く、より格好良くなるんじゃないかと自然に考えられる質なんです。なので、全く何もないゼロから生み出すというよりは、アップデートやリニューアル、改善といったことが、自分の得意なところではないかと自己分析しています。一見新しく見えるかもしれないのですが、実は今まである物の延長線上に必ずいると思います」。
特に専門的なことを勉強してこなかったと言う堀口氏だが、しっかりと自分と向き合うことで自分の可能性を明確にし、作品へと見事に反映しているのだ。

堀口氏が考える江戸切子の魅力

今回のコラボレーションにあたり、堀口氏が特別にOCEANUSをイメージしてカットしたグラス今回のコラボレーションにあたり、堀口氏が特別にOCEANUSをイメージしてカットしたグラス

「色々な意味で、その作品が置かれている環境に影響を受け、表情を変えるところ。そして江戸切子が持つ透明感でしょうか。例えば、お茶を入れる前のグラスは透明ですよね。でもお茶を入れれば緑になる。そのような当たり前のことが、江戸切子を通したことで美しく変化して見えるというのは大きな魅力だと思います」。
経験を積んだ今では、ある程度の表情の変化を計算できると言う。その時の感覚や気分を作品に落とすことで、自らを表現しているのだろう。また現在、様々な場所やプロダクトなどとコラボレートしている堀口氏。伝統工芸を守り、継承していくということについては、どのように考えているのだろうか。
「先程もお話したようにアップデートを積み重ねていくと言った方が正解かもしれません。産業という側面を持っているのが、江戸切子の中では非常に重要で、昔から伝統工芸だった訳ではありません。むしろ当時は、最先端なものだった。そこからずっと続いてきて、あるところで第三者から、あれって伝統工芸だよね、ずっとあるよね、ってなっただけで。その都度、作り手がいて、使い手がいて、求められるから作る。提案もする。逆に言うと、使い手からの“こういうのはできないの?”という要望があって、それがずっと続いている。時代に寄り添ってきたからこそ、江戸切子は求め続けられているのだと思います」。
求められているものに常にアップデートしていく。つまり伝統とは、革新の連続なのである。

伝統のプライドをOCEANUSに刻む

一つひとつハンドメイドでカットされるサファイアガラスベゼル一つひとつハンドメイドでカットされるサファイアガラスベゼル

今回のサファイアガラスベゼルにカットされたデザインは、一瞬“これは江戸切子なの?”と思ってしまうくらいシンプルである。
「現在、組合(江戸切子協同組合)で江戸切子と定義しているのが、1. ガラスであること、2. 手作業であること、3. 主に回転道具を使っていること、4. 関東一円で作っていること。色やデザイン、形、用途では縛れなかった。では何が今まで何も変わらず、ずっと続いてきているのか。自分の解釈としては、ガラスを加工して、使い手を驚かせて魅了しているということだと思います。そう考えると、今回のコラボレーションという試みは、むしろ江戸切子らしいのです。カシオさんからの要望に対して、今の江戸切子なりの対応・提案の仕方をして、しっかりと物になる。そこには伝統柄を配置する必要も無ければ、和であるということも実は無いんです」。

今回の肝となった目立て作業今回の肝となった目立て作業

通常、クリスタルガラスのような硬度の低い素材を使用する江戸切子。ダイアモンドに次ぐ硬度のサファイアガラスをカットすることについては、どうだったのだろうか。
「カット自体というよりも、ダイアモンド・ホイール(カットする道具)を砥石で研ぐ、“目立て”が大変でした。通常は10個に一回ほどのペースでおこなうのですが、サファイアガラスだったので、2~3個をカットしたら研ぐ。金属にあてたことがあるのですが、サファイアガラスはそれに近いというか、ダイアモンド・ホイールとの相性が合っていないという感じですかね。もちろん目立てをしっかりおこなえば、違いは無いというか大丈夫なんですけど、やはり目立てが重要。作業としてはシンプルですが、ちゃんと真面目な仕事をしなくてはならない。少しでもなめたらクオリティは絶対に上がらず、数をやったときに個体差が出てしまいます。我々からしたら1,500個でも、お客様にとっては自分だけの1個ですし、買った物の出来がたまたま悪かったら、許されないですよね。自分だったら絶対に嫌です。なので、そういうつもりで切っています」。

最後に、OCEANUSとコラボレーションした感想を聞いてみた。
「東京の伝統工芸として発信されている江戸切子と、OCEANUSが持つ都会的なスタイリッシュさには、特に親和性を感じました。またカシオ、OCEANUS、そしてMantaとしての、いわば大事な核の部分は何かということを通じて、“江戸切子としての本質は何か”ということを見直す機会がありました。本質としてブレなければ、そこがハマっていれば。使い手を魅了するということに関しては、江戸切子にしてもカシオにしてもMantaにしても、けしてブレなかった。でもパッと見の見え方は変わっている。そこが良かったなと思います」。

江戸から東京へと時代を跨ぎ、繋いだ江戸切子という伝統と、絶対精度の追求という更なる高みを目指す革新のOCEANUSが融合した今回、両者が持つアティテュードが明確になった。ブレずにいること、それこそが未来に向けて在り続けるための条件なのだ。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Masashi Nagao

堀口徹 (三代秀石)

1976年、東京都生まれ。祖父が江戸切子職人であるという環境のもと、二代目秀石(須田富雄、江東区無形文化財)に江戸切子を師事。2008年、三代秀石として株式会社堀口切子を創業。日本の伝統工芸士(江戸切子)認定。伝統的な手法や様式を継承しながらも、斬新で現代的なものづくりを信条とする。
堀口切子オフィシャルサイト