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Encyclopedia OCEANUS #9

“絶対品質” を生み出す 人間の眼 ~山形カシオ Vol.3

Made In Japanの誇りとしてOCEANUS全モデルの製造を一手に担う、山形カシオ工場。その“OCEANUSの聖地”のリアルな現場をお伝えするため、全3回に渡って連載しているエンサイクロペディア特別編。最終回となる今回は、山形カシオが誇る生産ライン「PPL(プレミアム・プロダクション・ライン)」に、唯一立ち入りが許されたメダリストたちとその作業工程についてお届けしたいと思う。
Vol.1 「絶対精度を追求するOCEANUSの聖地・山形カシオ」
Vol.2 「時計の心臓について語る」

選ばれし熟練工、メダリスト

CASIOの時計ラインナップの中でもOCEANUSを筆頭とするフラッグシップモデルの製造・組み立てに特化した革新的ライン、それが「PPL」である。そしてその誕生とともに発足したのが、メダリストという技術者認定制度。PPLの中には、この限られたメダリストしか入ることができない。メダリストには、ゴールド、プラチナ、マイスターの全3段階があり、それぞれのランクで携わることのできる作業内容も異なる。メダリストになるためには、社内規定で設けられた学科試験と複数工程が含まれた作業認定試験に合格しなくてはならない。まず対象となるのが、1年以上の経験を持つ一般作業ラインの技術認定者で、合格するとゴールドメダリストとして初めてPPLに入ることが認められる。そこで3年以上の経験を積み、プラチナ認定に合格すればプラチナメダリスト、さらに3年以上の経験とマイスター認定の合格で、最高位のマイスターに認定される。また一度メダリストになったとしても、年に1回その技術をチェックする試験がある上、時計の修理に関する国家試験もある。こういった高いレベルで、品質だけでなく熟練工も徹底管理されているのだ。

マイスターの証である黒いバッチマイスターの証である黒いバッチ

現在メダリストは14名(すべて女性!)で、その中でも最高位“マイスター”の称号を得た2名にお話を伺いながら、実際の作業についても見ていきたいと思う。

人間の感性がものを言う作業

高精度生産ラインにて、時計の心臓部であるローターなどを搭載したアナログブロックが次に向かうのは、いよいよPPLである。埃や塵のないハイレベルなクリーン環境の中で、まずソーラーセル、文字板、針などの配置がおこなわれる。

直径0.5mmの小さなコイルスプリングと端子板の組立直径0.5mmの小さなコイルスプリングと端子板の組立

モニターに拡大投影された針映像を見ながら、角度や位置の調整をおこなうモニターに拡大投影された針映像を見ながら、角度や位置の調整をおこなう

なかでも針の圧入(取り付け)には高度な技術と繊細な作業が要求されるという。
「まずは眼で見ながら、一つひとつ機械で調整をし、さらに自分たちの手で検査をしながら進めていかなくてはなりません。材質などの違いから、そこには人間にしかない、様々な研ぎ澄まされた感性が必要とされるのです」。
こう話すのは、実際に針圧入の工程を担当しているマイスターの松枝ゆかり氏。高度なデジタル技術を駆使しながらも、最後は人間の眼や手作業でなくては成し得ない作業である。

マイスター・松枝ゆかり氏マイスター・松枝ゆかり氏

熟練した技術を要する針圧入の工程熟練した技術を要する針圧入の工程

「今でこそ、メダリストとして仕事をさせていただいていますが、入社当時は本当に何も分からなくて、社員の方から時計のいろはを徹底的に教え込まれました。それから10年が経ち、マイスターの資格を取得することができましたが、今でも日々勉強しながら更なる技術向上ができればと思っています」。
OCEANUSが様々な機能を搭載して進化し続けるように、メダリストである熟練工も、その技術の進化が日々問われているのだ。
「すべての工程を完璧にこなし、お客様に喜んでいただけるクオリティーで、OCEANUSを送り出せたらと常に念頭に置き、仕事をしています。いい意味でのプレッシャーを背負っているので、店頭まで商品を確認しに行ったこともあります(笑)。そしていつかは、自分が作ったOCEANUSを購入したいという気持ちを胸に、もっと高い技術を身に付けるための挑戦をし続けたいなと思っています」。

絶対品質へのあくなき追求心

こうして完成されたモジュールを、一つひとつ手作業でケースにセットし、裏蓋をはめていく。そして最終工程であるPPL内の検査ルームへと運ばれる。ここを担当するのが、もう一人のマイスターである土井直美氏だ。

マイスター・土井直美氏マイスター・土井直美氏

実際にボタンを押して動作を確認していく実際にボタンを押して動作を確認していく

「このルームでは完成した製品を、機械と自分の眼を使って検査するという最終工程を担っています。外観検査やボタンの感覚などは、どうしても機械では分からない領域なので、我々の経験が活かされる場面だと思っています」。
実際に時計を動作させて現実に起こりうる状態をイメージし、異常が無いかどうかを確認するこの検査、抜き取りではなく全数でおこなっているという。

水没試験機。水没検査によって製品の気密をチェックする水没試験機。水没検査によって製品の気密をチェックする

水の中に沈め、一定の圧力をかける水の中に沈め、一定の圧力をかける

「厳しい試験をパスしてマイスターになったからこそ、その名に恥じないよう、品質を第一に考えた作業をしなくてはならないと思っています。さらに言えば、山形カシオの誇りでもあるPPLという大きなブランドを汚すも守るも、私たちの手に掛かっていると思うくらいの気持ちで日々仕事に望んでいます」。

ケースの見切り、文字板の植字・印刷の精度を含む、針精度検査ケースの見切り、文字板の植字・印刷の精度を含む、針精度検査

すべての検査をクリアした上で、バンドを取り付けて完成となるすべての検査をクリアした上で、バンドを取り付けて完成となる

そして、このOCEANUSの品質を守るのは、決して、マイスターや他のメダリストだけの力ではないと土井氏は語る。
「忙しくて手が足りなくなったり、病欠などで休みが出た工程には、すぐに対応できるよう、普段からいいチームワークで仕事ができています。私たちが守らなくてはいけない品質を保つためには、絶対的なチームワークが必要なんです」。

ケースやガラスに至るまで、まるで我が子のように1本1本愛情を持ってチェックをし、出荷工程へと送られるケースやガラスに至るまで、まるで我が子のように1本1本愛情を持ってチェックをし、出荷工程へと送られる

最後に“あなたにとってのOCEANUSとは?”という質問を投げかけてみた。
「山形カシオの誇りであり、私のすべてです」。
この言葉こそ、今回の連載に登場していただいた方々、そして山形カシオで働くすべての方の代弁ではないだろうか。その誇りと、高精度のエレクトロニクステクノロジーと匠の技術や感性による精緻な手仕事の融合によって、OCEANUSの絶対品質や信頼性は生み出されているのだ。そう思うと腕に纏い、普段何気なく正確であることに安心感を得ていることに重みを感じないだろうか。

OCEANUSの生まれ故郷である山形カシオ。この5月には時計専門の新工場屋が完成し、PPLラインもそこに移行されるという。さらに精度の高い時計づくりを追求するこの新工場屋を次回ぜひお届けしたいと思う。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Kentaro Ohama