

「スーツを安易に考えてはいけない」。スタイリスト、ファッションディレクターとしてメンズファッション界を牽引する存在でもある青柳光則氏は開口一番、そう語る。
着ていればなんとなくきちんと見えると言うと、そんなことはないのだとも。むしろ何気無く着ているスーツは、一見、どれも同じように見えると思いがちだが、それだけに着こなしや選び方で、着る人自身のスタンスを明確に表現してしまうからだ。安易なスーツ選びほど危険なものはないのかもしれない。そう考えると、OCEANUSを選び、纏うという姿勢とスーツの接点を今一度再検証する必要がある。
メンズファッションのスタイリスト・ファッションエディターとして長きに渡り、一線で活躍する青柳氏。
スーツを着る前に
スーツには、シングルやダブル、スリーピース、3つボタンといったように様々なスタイルがあり、さらにラペル(襟)の幅やゴージの位置、ベント(裾の切れ目)、パンツの丈まで含めると意匠も実は千差万別だ。では、正しくスーツを選び、着るための第一歩とはどこから始めるべきなのだろうか。
「着こなしだ、ブランドだと言う前に、最も重要なのはどれだけ自分の身体にスーツがフィットしているかではないでしょうか。サイズの合っているスーツに身を包んでいるだけで、かなり印象が変わります。確かにオーダーメイド=ス・ミズーラなどで、身体にピッタリのスーツを“作る”のは金銭的にも時間的にも大変な作業です。たとえ一般的な既製のスーツだとしても、少しでも身体にフィットさせるための“お直し”は、スーツを美しく着るための最低条件です」。
最近では、テーラーの知識を持ったお直し屋さんもいるので、昔は不可能だと言われたような“お直し”でも対応してもらえるようになったという。
「例えば、ヨーロッパの一般的なサイズでいうところの、46とか48というのがありますが、間の47というサイズは既製服にはありません。サイズがドンピシャという人がいればそれでもいいのですが、大概の場合、肩幅が合っても胸やウエストが合わない、袖丈に至っては、多くの人は左右の長さが違うのは当たり前。当然、サイズをフィットさせるには修正しなければならないと心がけてください。46の上着のボトムでは大き過ぎるなど、既製服の場合は、ほぼお直しはマストだと言ってもいいのです。そのアドバイスをきちんとしてくれる店で選ぶのはもちろん、自分自身の体型をよく観察して、熟知するというのも着こなしの基本の“き”です」。
自分の体型を知って、そこに合わせていく
「まずしっかりと把握して欲しいのが、自分の体型です。プロポーションを知ることで、キツキツのスーツを着たり、ダブダブを着るという愚を犯さなくなります。スーツだけでなくシャツに関しても、頭が大きくて背の低い人が、ワイドスプレッドカラーのシャツを着ていては、ちょっとバランスが悪いと思うし、ネクタイにしても海外で購入したものなどは長く出来ているものが多く、日本人には長すぎる場合がある。そうした時には臆せずネクタイの長さを詰めたり幅を調整するべきです。自分の体型を知ったことにより、身に付ける物を合わせていくことができるわけです。ボトムはもっと難しく、トレンドもあるので今ならハーフクッションにする。袖丈も自分の腕の長さに合わせて詰めたり出したりは必要。背中の抱きじわもウエストの調整で消すことができます。ちょっと面倒臭いと思われるかもしれませんが、体型とフィットにこだわることで、もっと綺麗にスーツを着ることができると思います」。
まずはフィット感、そのために自分の体型を把握し、そこに合わせて“お直し”をする。その上でスーツを選ぶために大切なこととは。
「色で言えば、まずは紺とグレー、さらに言うと、濃い・中くらい・薄いといった3タイプの計6着を持っていればいいと思います。10年くらいメンズの服は変わらないので。あとは選ぶ時に女性と一緒に行き、意見を聞くといいと思います。その際に女性が好み云々ではなく、“なんかだらしない・汚い”と言うことには注意しなくてはなりません。フィットが綺麗じゃないと、汚く見える=なんかだらしないという印象を持ちます。要は自分の目だけを信用してはいけないということです(笑)」。
腕時計とスーツの関係性を知る
ビジネスシーンにおける、もうひとつの重要アイテムである腕時計。スーツとは切っても切れない関係である。
「合わせ方のポイントは、時計のフェイスの色とスーツの色柄を合わせるとコーディネートしやすいというのはあります。例えばこのOCEANUS(OCW-G2000G-1AJF)で考えるならば、ベゼルのブルーが印象的で、表情がスポーティーなので、私はあまりフォーマルになり過ぎないようにチャコールグレーではなく、ミディアムグレーのスーツをまずセレクトします。シャツは白だとフォーマル感が出過ぎてしまうので、ブルーが良いんじゃないかな。そうするとネクタイもブルー系が合うんじゃないかと全体が見えてきます。やはりTPOに準ずるということが大切です。一番やってはいけないのが、ジェームズ・ボンドのように、タキシードにダイバーズウォッチを合わせるようなこと。あれは彼だから成立しているのです(笑)」。
青柳氏による、OCEANUS「G2000G」に合わせたコーディネート。スーツは、リベラーノ&リベラーノ製(イタリア・フィレンツェ)。
昨年『男のお洒落道 虎の巻 The Wearing Bible for Gentlemen』というメンズファッションの教科書とも言える一冊を上梓された青柳氏。そこに書かれていた一文を引用したいと思う。
「基本を踏まえて冒険を楽しむ。すべての服好きに幸服を。」
まずは基本を知り、その上で自分らしさとは何かを考える。基本をしっかりと知ることは、お洒落云々の前に“素養”なのだ。そうしてスーツを着るのと同時に、その先にある所作やボディランゲージといったその人自身の個性を表現することで、ジェントルマンとしての完成形へと近づいていくのだろう。この嗜みを知り、ぜひOCEANUSと共に新たな冒険を楽しんでもらいたい。
Text: Tatsuya Nakamura |
青柳光則

1960年 東京生まれ。専門学校卒業後、スタイル社「男子専科」編集部に勤務。1983年 フリーに。スタイリスト、ファッションエディターとして、ファッション誌、広告、芸能&アーティストの衣裳制作などを手掛ける。1992年 有限会社ハミッシュ設立。代表取締役就任。1996年 東京・原宿に「Ka’eL」を開店。従来の業務と並行して、スタイリスト発信のセレクトショップ(と呼ばれる業態の服飾雑貨店)の先駈けとして話題になる。翌年よりオリジナルデザインのウエアを販売し、国内外に卸売りするなど事業を拡大。1999年 東京コレクションでデザイナーデビュー。2001年 立ち退きのため「Ka’eL」閉店。以降は、スタイリスト、ファッションエディターに専念。男性のライフスタイル全般(オートバイ、クルマ、旅、住宅、食、ペットなど)に分野を拡げ、多媒体で活動。近年は、着こなしの”師範代”をはじめ、メンズファッションの講演などにも携わる。

格好いい男であり続けるためのバイブル。
基本・実用・応用をまとめた男の服読本。
『男のお洒落道 虎の巻 The Wearing Bible for Gentlemen』
青柳光則(著)
万来舎
¥1,800(+税)
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