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BLUE MOTIONS2nd Anniversary issue
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次代への旅

Next Wave

音楽と時間の 深遠なる関係

伊藤陽一郎氏(DJ・プロデューサー)

伊藤陽一郎。その名はOCEANUSファンの方なら、記憶の片隅に残っているのではないだろうか。OCEANUSの数々のパーティでDJを務め、CMソングやテーマソングといったOCEANUSのための楽曲も数多く手掛けているからだ。もちろん、クラブミュージック好きやコアな音楽ファンには、“Natural Essence”や“AKAKAGE”というアーティスト名でも知られていることだろう。しかも今年でデビュー25周年を迎えるのだという。
そんなOCEANUSや音楽シーンを、影になり日向になり支えてきた伊藤陽一郎氏。彼が、これまでOCEANUSのために創り出した楽曲の中から、珠玉の2曲を改めてアナログ7インチシングルとしてリリースすることになった。そんな彼の音楽観とは何かを探ってみた。

音楽に歴史あり

そもそも音楽への芽生え、のめり込むきっかけはなんだったのだろうか。
「(以下、括弧内:伊藤氏)岐阜の田舎の小学生だった自分にとって最初のショックは、何と言っても<YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)>でした。自転車のカゴにラジカセを積んで、大音量でかけて走り回っていました」。

その頃から人に音楽を聴かせたがっていたということか。
「そうかもしれないですね(笑)。そこから音楽遍歴が始まるのですが、常にちょっとメインストリームから外れたところというか、人とは違うものを探して聴いていました」。

高校まで岐阜で過ごした伊藤氏。大学で東京に上京することとなる。そしてなぜか美術大学の、それも建築科に進学する。
「漠然と、音楽やファッションが好きで、楽器演奏はとうの昔に諦めていたから美大かなと。そこでDJ的なことを始め、それがだんだん面白くなって、さらに自分たちで(楽曲の)リミックスを作ったり、パーティを開いたり。そんな中、仲間3人で作ったユニット“Natural Essence”として、憧れのYMOのリミックスが評判を得たことで、音楽の道へ進む決心がついたのかもしれません」。

建築には未練がなかったのだろうか。
「在学中から卒業後も長いこと某有名建築事務所でアルバイトをしていたくらい、そっちでも評価は高かったんですよ(笑)。でも、もう音楽で行くと決めていたから、迷いはなかった。ただ、建築を学んだということで、音楽を構築的に考えられるようになったのは確かです。無駄ではなかったということかな」。

そして伊藤氏の代名詞ともいうべき、“AKAKAGE”がスタートする。
「“Natural Essence“として楽曲をUKリリースしたりと、ある程度の評価を得ていたのですが、もっと違うことをしたいと思い、別名義の活動を考えたのがスタートです。“AKAKAGE(アカカゲ)”と名付けたのも、ある意味、裏での活動だから、忍者かなと。単純な発想です(笑)。そこでは、表の活動とは異なる自分の好きなラテンやジャズだけでなく、様々なジャンルの音楽を作ったり、色々なアーティストのリミックスをしながら、いまに続いています」。

デビュー25周年、“AKAKAGE”20周年の意味

単にDJという枠を越えた活動をおこなっている伊藤氏。
「実はDJから広がったというよりも、最初から楽曲制作はしていたし、リミックスもそれこそ数え切れないほど手掛けてきました。基本は楽しんでもらいたいということでやってきたから、職種やジャンルにはこだわりたくないですね」。

それが25年続けられたということだろうか。
「そうかもしれません。時代は変わって、音楽も多種多様になっているけれど、僕は、どこかみんなにハッピーになって欲しくて音楽と関わっているから、続けられたのだと思う。その部分での音楽に対するスタンスは、音楽を志したときから変わっていません」。

そんな伊藤氏が自身のアニバーサリー作品として選んだのが、OCEANUSのための2曲。4月11日に発売されるという。
「どちらも思い入れ深い楽曲です。『青の世界 feat. CRAZY KEN』はそれこそ、OCEANUSのビジュアルから一気にイメージが広がって生まれた曲。時計と街がシンクロしながらゆっくり回る感じを曲にしました。そしてOCEANUSの10周年記念ソングとして作った、『巻き戻したいほどの幸せ』。これは、東京スカパラダイスオーケストラの谷中さんの作詞です。2曲ともボーカルはクレイジーケンバンドの横山剣さん。剣さんは普通、人の曲のボーカルを取らないのだけど、剣さんのボーカルがどうしても必要だからとお願いして、歌ってもらいました。結果的には大正解。男の心情とかをじっくりと声に乗せられるのは、剣さんしかいないですからね」。

DJとしての伊藤陽一郎という名前からは、『青の世界』のバラード的な旋律は意外な感じもする。
「僕自身はDJをやるけれど、曲はメロディーメーカーとしての意識で作っているから、違和感はないですね。『巻き戻したいほどの幸せ』の方は、オーソドックスなスカをやりたいと思って、狙い通りになりました。どちらの曲も自分としては、スタンダードになるようにと思っていて、そういう音楽を作りたかった。いつまでも歌い続けられる、いつ聴いても素敵であるようにと。いい音楽は時代を越えて、いつまでも聴かれ続けると思うし、自分の曲もそうあって欲しい。OCEANUSという永遠に時を刻むものを象徴するなら、そうでなければいけないと思ったのです」。

その根底には、伊藤氏が子供の頃から追い続けてきた、音楽を通じて人を楽しませたいというベーシックがあったからだろう。
「そう。でもそれだけでなく、自分自身も進化し続けて、その中で本当のスタンダードを産める自分にならなければという気持ちもあるからですね」。

時を越えるスタンダード・ナンバー。その列に『青の世界』と『巻き戻したいほどの幸せ』が加わる日が来ることだろう。そう願いたいと同時に、OCEANUSがこれまで青の進化を標榜し目指してきた、絶対的な時間との精緻な対峙も、永遠に正確でありたいと願い、進化を続けている今もまた、スタンダードへの途なのかもしれない。

Text: Y.Nag | Photography: Masashi Nagao

伊藤陽一郎

DJとして国内外で活躍する傍ら、"AKAKAGE" "Natural Essence"といった幾つもの名義で、自身のアルバムを発表。また個人名義によるMIX CDも多数リリース。様々なアーティストへのプロデュースやアレンジも精力的に手掛ける。テーマ曲を担当するなど、オシアナスのサウンドプロデューサー的存在でもある。今年2018年はデビュー25周年、AKAKAGEとしても活動20周年という節目を迎える。
毎週土曜日bayFMカウントダウンレディオ内にてDJ-Mix「AKAKAGE MIX 5minute FIX」(13:30頃)も好評オンエア中。
オフィシャルサイト

INFORMATION

伊藤陽一郎「巻き戻したいほどの幸せ / 青の世界 feat. CRAZY KEN」
OCEANUSのテーマソングとしてこれまでに制作された音源の中から、伊藤陽一郎プロデュースによる楽曲を抜き出したアナログ7inchシングル作品。A面の「巻き戻したいほどの幸せ」はボーカルに横山剣(クレイジーケンバンド)、演奏に東京スカパラダイスオーケストラのホーンセクションを迎えた軽快なスカ歌謡で、作詞はスカパラの谷中敦が担当。B面の「青の世界 feat. CRAZY KEN」は同じく横山剣のボーカルをフィーチャーした楽曲で、スウィングするバンド演奏にドラマチックなストリングスが寄り添う、美しいバラードナンバー。ジャケットに描かれたオープンリールのイラストは伊藤陽一郎本人によるもの。
4月11日発売 / 価格:¥1,620(税込)/ JET SET
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