Skip to Content
奇を衒わずに守り続ける伝統と技
木工芸品専門店<桶栄>の仕事に倣う

奇を衒わずに守り続ける伝統と技
木工芸品専門店<桶栄>の仕事に倣う

江戸時代初期より、良質な材木の集積場として発展した街“東京・木場”の近く、江東区扇橋に店を構える木工芸品専門店<桶栄-おけえい>。創業130年を迎えた今もなお、日本が誇る伝統技法を守りながら、東京に唯一残る結桶の老舗として変わらぬ仕事を続けている。

素材が持つ力を最大限に引き出す

「結桶(ゆいおけ)」とは、短冊状の木と木をぴったりと合わせ、箍(たが)で締めて作った容器である。明治20年に桶栄を創業した川又新右衛門氏から数え、現在で四代目となる川又栄風氏。一子相伝の技術を受け継ぎ、江戸櫃や手桶などといった木工芸品の数々を今日も一つひとつ丁寧に生み出している。その数ある作業の中で最も重要な工程として素材選びがある。一体どのような木が結桶には適しているのだろうか。
「色々ありますが、一番多いのは檜(ヒノキ)か椹(サワラ)になります。その中でも、うちでは高樹齢の300年から350年くらいの長野県産を使い続けています」。
入手が困難になりつつあると言われる最高級の木材。この二種の高樹齢木を選ぶ理由とは。
「やはり素材の質が特に優れているところですね。耐水性が高く、キメが細かいので経年変化で変形しづらく美しい質感を保てるところ。そして強すぎないまろやかな香りと、結桶に必要な抗菌力や防カビ力が非常に強いという必要な条件がすべて揃っているからです」。
きっと130年もの長い歴史と経験に裏付けされた答えなのだろう。

基本、どのメーカーの物でも同じ形をしているように見える木工芸品だが、桶栄の製品が醸し出すそのオーラは、他とは明らかに一線を画している。なぜこのような美しく色気ある仕上がりを見せるのだろうか。
「より高度な技術というのは、“ちゃんとした物を作る”という技術なので、いかに丁寧にその仕事を熟していくかに尽きると思います。技法や素材は、500年以上前と同じような手順でやっていますけど、実際に出来上がる物は現代の人に合った形で、使いやすいように様々な箇所を微調整しているのも理由の一つでしょう」。
細かい微調整の繰り返しが、唯一無二の存在へと繋がっていく。それは、OCEANUSが積み重ねている、革新への挑戦と同じではないだろうか。

結桶を作り続ける上でのこだわりはいかに

昔ながらの変わらぬ物作りにこそ難しさがある。伝統を守りつつも、その中にわずかな時代感を落とし込む事は、どんな分野でも必要ではないだろうか。古き時代から変わらぬ形であり続けながら、数年後に手にした人にも新鮮な印象を与えなくてはいけない重圧は、我々には計り知れない。
「デザインしすぎてしまったり、奇を衒うような物作りはしないよう心がけています。現状ある物に、ほんの少しの気遣いを加えるだけで、他とは違う印象を与えることが可能なのです。奇抜なことをやってしまい、時代とともに古くなってしまうのは避けたいので。今日完成した櫃が、20年後に見ても変わらぬ美しさである物作りを続けたいと思います。それともう一つは、完成を見極めるタイミングは大切にしています。あまり大事にやり過ぎてしまうと、白木の清々しさが曇ってしまい、すっきりした感じが出なくなってしまうのです。もしかしたら私にしか感じていないところなのかもしれないですが。そこを間違えると、本当に製品の持つエネルギーが霞んでしまいます」。

結局、伝統とはなんだろう。時折、伝統という言葉が安易に一人歩きしているような気がする。例えば今回取り上げた結桶。プラスティックなどの普及で廃れてしまいつつあるが、単に利便性だけでなく、そこには長い時間をかけて創り上げた匠の技と、確かに利便性をはるかに超える“何か”が加わっている。それは素材選びから完成のタイミング、さらには時代感まで、全てを見通す“目利き”。これこそがまさに桶栄の伝統技術なのかもしれない。

さて、そんな栄風氏の目に、OCEANUSはどのように映ったのだろうか。
「なぜか手作り感が伝わります。製作に関わった方々の愛情がきっとそう感じさせているのでしょう」。

130年の歴史を守り続ける男が、未だ最高と認めず、日々のたゆまぬ努力を積み重ね続けている。決して当たり前ではない。同じことを毎日繰り返すその先にきっと、自らのあるべき姿、伝えていく未来を思い描いているのではなかろうか。OCEANUSもまた精緻という与えられた使命を全うしつつ、さらに新しい“時”を刻み続けている。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Masashi Nagao

桶栄

創業130年の老舗木工芸品店。皇室や宮内庁の御用をはじめ、江東区無形文化財に指定されるなど、伝統的技法を活かした丁寧な仕事が各方面で評価されている。

東京都江東区扇橋1-13-9

電話:03-5683-7838

ウェブサイト

Recent News

Recommend