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静かに、そして熱く込める想い
<ノックの帽子屋>に尋ねる、物作りの真髄

静かに、そして熱く込める想い
<ノックの帽子屋>に尋ねる、物作りの真髄

京成曳舟駅から、下町風情が色濃く残る商店街を抜けた一角に店を構える<ノックの帽子屋>。時が止まったかのような趣ある店内に、所狭しと並ぶハンドメイドの帽子やビンテージの木型が目印である。
そこにある個性的な様々な帽子は、作り手の情熱がそのまま反映され、愛情という名の技術が詰まった丁寧な仕事として形を成している。

ノックの帽子屋オーナーの横山智和氏

数ある服飾品の中から帽子と出会った理由

「もともと、美術系の学校で立体物や陶芸、油絵など色々な事を学んでいました。そして、いざこれからどう生きていくかを考える時期になった時、自分には平面より立体物の方が合っているなと。さらに立体物の中でも何がいいだろうかと考え、小さい頃から自ら買っていた帽子ならば、仕事として続けられそうだなと思ったのが始まりです」。
立体と平面。物を形にするという事は、必ずこの2択に迫られる。表現者として、まずどちらの方法が、より思いを伝えられるかを決断しなくてはならないのだ。幸運にも幼少期にそのルーツを見出していた横山氏。しかし、なぜ平面的な物ではなく、立体物に惹かれていったのだろうか。
「絵画もやってはいたのですが、とにかく絵が苦手だったのと、平面の物を売るのは難しいと感じたのが理由の一つです。そんな事を考えているうちに、人と関わる回数が多い物、すなわち使える物を作った方が僕には向いていると思い、帽子に辿り着きました」。
そこから始まった帽子との二人三脚。アトリエに並ぶ横山氏の作品は、キリッとした渋いデザインの物から、丸みを帯びた色っぽいデザインの物まで様々な種類や形が存在する。このシンプルなようで、奥が深い帽子という存在が、一度始めたらやり抜かなければ気が済まない一本気な性格に火を付けたのであろう。そして気づけばすでに11年というキャリアを、この若さで積み上げていたのである。

力強く繊細に帽子の型をつける作業

一人でも多くの方に届けるためにやるべき事

約80もの型を今年の春夏期だけで用意したという。それに色と素材、そしてリボンを組み合わせると、結果何百、もしくは何千通りにもなるわけだ。この途方もない数字を笑って言える裏には、欲しい物を確実に選んでもらいたいという思いがあってこそだろう。そして、行商ツアーという選択肢がさらなる開拓へと繋がっていく。
「何か一つ形があると、お客様とのコミュニケーションが取りやすいと思ったのです。せっかく仕事としてやっているので、自分の帽子を広く知ってもらうきっかけになれば嬉しいじゃないですか」。
寡黙で物静かな横山氏らしい理由がそこにはあった。愛情を込めて完成させた作品を、より多くの方に手にしてもらうためには、自らが直接お客様に思いを届ける事が大切であると感じたのだろう。だからこそ、この“行商”というスタイルが合っているのだと思う。インターネットが主流の現代の中で、ある意味アナログ的なこの動きが、やはり人間である以上、必要不可欠なんだという事を再認識させられた。

あると楽しい物、それが帽子の存在意義

直射日光を避ける、寒さを防ぐといった、むしろ実用的な道具であった帽子が、文明の発展とともに、自分を美しく見せ、他人との差別化を図る服飾品へと昇華した訳だが、なぜ今ではこんなに多くの人に帽子という存在が愛されているのだろうか。その答えは横山氏の言葉の中にあった。
「帽子を作る上で、そこまで形式にこだわらないという事が一つのこだわりかもしれません」。
“こだわらない”。それは決して何でもいいという意味ではなく、より柔軟にお客様のニーズを読み取るために、こだわらない自分にたどり着いたのだ。このようなスタンスでいてくれる匠が存在するからこそ、帽子は毎日変えられる髪型だという人もいる程、我々の生活に浸透したのであろう。

横山氏が持つジャパンメイドの誇りとして、OCEANUSに感じるシンパシーはいかに。
「OCEANUSも僕が作る帽子も同じ立体物なので、制作の過程でもちろん苦労は付き物だと思いますが、絶対に作っている方々も楽しんでいるはずです(笑)」。
心から物作りを愛しているのが伝わる一言。
「今は帽子作りを生業としていますが、もし小さい頃に腕時計が好きだったら、腕時計作りをしていた可能性は十分にあります。とにかく昔から何かを作る事が好きで、それだけを悩み考えていました」。

物作りをしている人々にある共通点。それは自らがこなす膨大な作業に対して、決して苦労を感じていないという事ではないだろうか。もし別の言葉で表現するならば、きっと“愛”というのかもしれない。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Masashi Nagao

ノックの帽子屋

徹底したハンドメイドへのこだわりと、自らが身につけた時に楽しいと思える帽子を制作し販売。年間を通して日本全国を行商ツアーで回る事で、アーティストを含めた彼の帽子のファンを確実に増やし続けている、注目の帽子屋。

東京都墨田区京島3丁目17-7

電話:070-5072-3249

定休日:不定休

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