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しなやかな技術の中に見える温故知新
<革包司 博庵>の紳士革小物

しなやかな技術の中に見える温故知新
<革包司 博庵>の紳士革小物

玩具、文房具、造花などの卸問屋が店を構える台東区蔵前に、皮革小物専門メーカー<革包司 博庵-かわほうし ひろあん>はある。紳士服に合わせる革小物を専門に作り続け今年で110年を迎えるも、止まることのない革への情熱が生み出す世界レベルの職人技はまさにジャパンメイドの誇り。日々続けられる努力の積み重ねが、三代に渡り継承され、進化とともに現代まで息づいている老舗がそこには在った。

自由自在にミシンを操る3代目 長谷川博司氏。

長い歴史の中での変化、そして守り抜いている事

「同じ物を作ろうと思っても、とにかく時代とともに材料や道具が変化していくので、昔ながらの事をそのまま続けていくのが不可能な部分が出てきます。例えば革を染料で染めるにしても、国の方針でこの染料を使ってはいけないという規制が掛かると、もうその染料は使えなくなってしまう訳です。昔あったアイテムはもうないの?と、よくお客さんに聞かれるのですが、そう言った理由等が重なり、生産ができなくなってしまう事を知らないのです」。
時代ごとに変化するその流れは、産業としての革製品作りを邪魔しているように思えてならない。
「それでも、昔ながらの良い所は踏襲していきたいので、革の良し悪しを見極める目を持たなくてはいけなくなります。これは革を取り扱う以上、絶対です。私自身3代目になるのですが、この道に入り46年。物心付いた頃から父親の仕事を見ているので、どういう物が良い革というのは、分かってはいるつもりです」。
やはり、どんな分野や職業でも共通するのは、まず基本を徹底的に叩き込む事なのだろう。しかし問題はそれだけではなかった。
「そして、もう一つの大きな問題は道具です。結局道具屋さんがやめてしまうので、どうにもならない事が多々ありますね。なので、革製品を作る前に、まず必要な道具を創意工夫し、自分で作らなくてはいけないのです。市場がどんどん縮小しているので、しょうがない部分もありますが、もしかしたら日本自体が物作りに適さない土壌になってきているのかもしれません。そんな厳しい状況の中、日々試行錯誤しながら続けていかなくてはいけない時代になってしまいましたね」。

縁ギリギリのところにミシンをかける、世界屈指の技術。

好きでやっている事に苦労という言葉はない

「それでも110年続いている一番の理由は、祖父も父親も自分も、物作りが大好きだからでしょうね。他人から見たらこの仕事は、とにかく細かいし作業工程が多いので、面倒な仕事だと感じると思います。でもその面倒臭さが仕事であり、好きな部分だと思うんです」。
好きでいる事は最大の強みであり武器でもある。一つの事を続けるのは、むしろ覚悟よりも気持ちの部分が大きいのかもしれない。
「OCEANUSも非常にこだわりのある仕事をするように、うちにもそういう仕事があるんです。もともとイタリアで行われていた技術で、この縁のギリギリのところにミシンを掛ける手法は、日本全国を見てもここでしかやっていないんです。イタリアは革製品の歴史は古いですから、物をよく見せる方法はよく知っていますよね。しかし、本国にもこの技術を使える工場がほとんどなくなってきている現状もあります。逆に今となっては、うちの工場でこの技術を指導してもらえないかと訪ねて来るくらいですから。私はこの手法が好きだったので、取り入れてやっていたんですけど、気がついたら国内でも僕しかこれができる職人がいなくなっていたんです。例えば、大手メーカーの財布とうちで作られた財布を比べてもらえると分かるのですが、違いは一目瞭然です。本物志向という言葉の意味が最近よく分からなくなってきています(笑)。そうは言っても、“名前を売る”ということも一つの技術なんですよね。そこの国の事情があって、自らのアイデンティティを打ち出さなくてはいけない訳ですから」。

一枚革から製作された、藍の絞り染小銭入れ。

様々なブランドが乱立する中、自身を見失わずに居続けるために必要な事は一体何なのかと尋ねてみる。
「コンセプトというよりかは、考え方だと思うんです。それは、唯一無二の物を作り続けるという事。先人たちがやってきた事を大切にしつつも、常に研究を怠らず進んで行く気持ちが大切だと思います。このベタ貼りの小銭入れも、一枚革を貼り合わせて作っているのですが、まず壊れないし折り目から切れてこないんです。これも特殊な糊の塗り方やプレスの加減の研究を重ねた結果、しなやかで丈夫な製品が出来上がるのです。やはり、心から購入者を感動させなくては駄目だと思っています」。

物作りを続けるために研究を重ねる長谷川氏は、OCEANUSに対してどのような印象を持つのだろうか。
「OCEANUSが持つ物作りに対する絶対的な自信と、私が革製品に込める情熱や精神的な部分に強い共感を覚えます」。
やはり一つの事を真剣に考え形にしていく職人にとっては、物は違っても見えない部分の苦労は肌で感じ取るのであろう。
しかし、革の話をしている時に見せる、長谷川氏の純粋な笑顔は忘れられない。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Masashi Nagao

革包司 博庵
[かわほうし ひろあん]

明治39年創業。紳士皮革小物メーカーとして独自の技術を駆使し、世界に誇れるジャパンブランドとして展開。長きにわたる歴史に裏付けされた、きめ細かな仕事は他に類を見ないほど。現存する日本最古の革小物工房。

東京都台東区蔵前4-4-1

電話:03-5833-7166 FAX:03-5833-7106

営業時間:平日 10:00~17:30

定休日:土曜/日曜/祝祭日

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