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1本の映画の中に“男”の真髄を見つけられるか?
OCEANUS 的シネファイル Vol.1
【フレンチ・フィルム・ノワール編】

1本の映画の中に“男”の真髄を見つけられるか?
OCEANUS 的シネファイル Vol.1
【フレンチ・フィルム・ノワール編】

映画の中には様々な人生が描かれている。あくまでフィクションではあるものの、そこから学ぶべき所作は数多くある。もちろん映画の芸術的な価値や、名画、大ヒット作など評価の基準は数多くあるだろうが、ここではあえて、OCEANUSが学ぶべきシーンがある映画とは、という観点から数点の映画をセレクトしてみた。
結果的に50〜60年代にフランスで制作された“フィルム・ノワール”からのセレクションになってしまったが、それにはいくつかの理由がある。“フィルム・ノワール”=黒い映画と訳せばいいのだろうか。スパイや犯罪者を取り扱う暗黒街系の映画。というと、荒っぽい映画を思い浮かべるだろうがそうではなく、どこまでもスタイリッシュかつ男っぽいのだ。今回取り上げる映画が主に作られていた60年代はベトナム戦争に始まり世界の政治・経済が大きく動いた時代だった。そんな時代だからこそ、人は、男は、いかに生きるべきかを常に問われ続けていたのだろう。
その結果か、この時代のフランスの“フィルム・ノワール”はその後の映画にも多くの影響を与えた。

多くを語らずとも、伝わる友情とは
<さらば友よ Adieu l’Ami>1968

二枚目のアラン・ドロンと男々しいチャールズ・ブロンソン。この二人の名前を聞くだけで、男臭さ満点なのだが、それ以上にストーリーの持つ味わいが伝説となっている。脚本のセバスチャン・ジャプリゾの凝った仕掛けにこそ、男同士の友情のやりとりが感じられる。例えば、なみなみと注がれたカップにコインを落とし、溢れるか溢れないかを賭けるというゲームが再三出てくる。そして有名なラストシーンでは、捕まるブロンソン、その横に逃げ切るドロン。その二人のすれ違いざま、ブロンソンの咥えたタバコにドロンが火をつける。二人は“イェー”と呟く(ブロンソンは心の中で、ドロンは大きく声に出し)。映画史上もっともスタイリッシュなラストシーンとされるこのシーン。前述のコインのゲームの幼さと、言葉のない男同士の友情のやりとり。
あくまでハードボイルドでありながら、子供っぽさをいつまでも無くさない。男の友情のあり様をここまで完璧に描き切ったシーンもないと思う。
そうだ、スタイリッシュなだけでは男としては完成しない。どこかに少年っぽさを忘れずに持ち続けること。そのことを噛み締めてみてはどうだろうか。

言葉ではなく“目”
<サムライ Le Samouraï>1967

こちらの主演もアラン・ドロン。しかし前述の<さらば友よ>とは違い、孤独な殺し屋を演じている。監督のジャン=ピエール・メルヴィルの最高傑作とも呼ばれる作品だ。全編を通じてセリフは極端に少なく、ドロンの表情だけでストーリーが展開すると言ってもいい。冷徹でありながら、時として感情的になる瞬間もドロンは“目”の表情だけで演技をしている様でもある。寡黙であること。必要以上に語り過ぎず、しかし感情豊かであること。これも男のスタイリッシュな生き方の見本ではないか、とこの映画は教えてくれる。
撮影は名匠アンリ・ドカエ、音楽はフランソワ・ド・ルーベとスタッフも最高の布陣であり、フランス映画、“フィルム・ノワール”という枠を超えても名作の1本で、北野武、ジョン・ウー監督などにも影響を与えたことでも知られている。

強さと優しさと
<現金に手を出すな Touchez pas au Grisbi>1954

もう1本、あげるとしたら“フレンチ・フィルム・ノワール”の金字塔<現金に手を出すな>だろう。“現金” = “げんきん” ではなく“ゲンナマ”と呼ばせたところに日本語訳者のセンスを感じるが、要は初老の二人組のギャングの物語である。この映画で見るべきところは、ジャン・ギャバンのスタイリッシュなスーツの着こなしと、二人の洒落た会話のセンスだ。ストーリー自体はシンプルだが、ギャバンのヤクザでありながら女性の扱いには紳士的な振る舞い、間抜けな仲間に対してのどこまでも貫く友情などなど、すべてのギャング映画の原点が詰まっていると言っても過言ではない。強さの中の優しさ。「ハードでなければ生きていけない。ジェントルでなければ生きていく資格もない」というフィリップ・マーロウの名セリフがどこかから聞こえてきそうだ。

さて、今回ご紹介した3本の映画に共通しているのは何か。それは男は自分のスタイルを貫き通すべきだという、簡単な事実だ。簡単だがなかなかに難しいのが、スタイルの堅持だ。<さらば友よ>のブロンソンは、ユーモアを常にどこかに忍ばせ、<サムライ>のドロンは極端に寡黙でありながら、自分の仕事にどこまでも忠実であり続けている。<現金に手を出すな>のギャバンは常にジェントルであろうと極力気を遣い続ける。
何かにストイックであること。そしてどこかに少年の心を忍ばせておくこと。OCEANUSもそんな男たちのために今日もストイックに時を刻み続けながら、青への憧憬を忘れないでいるのだ。

※次回アメリカ映画編もお楽しみに!

Text: Y. Nag | Photography: Masashi Nagao

MOVIE LIST

『さらば友よ』DVD

価格: ¥1,429+税
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント

『サムライ』 DVD

価格: ¥3,800+税
発売元: 株式会社IMAGICA TV
販売元: 株式会社KADOKAWA

『現金に手を出すな』
HDマスター DVD

価格: ¥3,000+税
発売元: IVC,Ltd.

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