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研ぎすまされた「二刻」に生きる、
茶の湯の精神
茶道家 松村宗亮氏

研ぎすまされた「二刻」に生きる、茶の湯の精神
茶道家 松村宗亮氏

横浜、関内のほど近く。マンションの一室に居を構えるお茶室、SHUHALLY「文彩庵」。その扉を開ければ、日常とは切り離された時間が流れている。着物に身を包んだ庵主・松村宗亮氏が茶室へと招き入れてくれた。マンションの5階でありながら庭には梅や桜の木がその季節の花を咲かせ、路地を抜ければ漆黒の茶室が待っている。LEDライトが仕込まれた光る畳、ステンレスの壁。
「掛け軸や器などの茶道具を現代美術家や陶芸作家たちに依頼して茶会を催すこともあり、アヴァンギャルドだと言われることもあります。ですが『人を驚かせ、わくわくさせたい』という“もてなし”の気持ちは、お茶本来のあり方。舶来の文化を誰よりも先に取り入れていた千利休も、当時の常識からはだいぶ外れていたはずです。そう考えると、ある種、私の活動も保守的と言えるかもしれません。この黒い茶室も実は千利休の孫、千宗旦の茶室の寸法を生かしたクラシックな作りになっているんです」。
ひとつのコンセプトのもと、様々な作品を用いて茶室という空間を形成する。「アートのキュレーション、プロデューサーのようだ」と言われることもあるが、昔から茶人にとってはごく普通の活動なのだと話してくれた。

各国で異なる「Tea Ceremony」の反応

最近では野外フェス「TAICOCLUB」や「TEDxTokyo」、首相官邸でのお茶会など様々なイベントでそのお点前を披露している松村氏だが、国内のみならず年に数回は必ずどこかの国でお茶を点てている。
「スペインでのお茶会は、みな非常にノリノリでした(笑)。何か質問があるかと聞けば、全員が手を挙げてぐいぐいアプローチしてくれる。かたや東ヨーロッパのポーランドで開催した時には、みんなノーリアクションで静かに聞いているのですが、終わった後はスタンディングオベーション。どこか日本に似ていましたね。ニューヨークでも“Tea Ceremony”は人気ですが、茶器や和菓子などへの関心が高い。逆にフランスでは茶会のコンセプトや、その精神世界に興味を持つ人が多い。みんなでお酒を飲んで雑談していても、私がお点前を始めると会場は水を打ったように静かになるのです」。
各国の国民性溢れる反応はいつでも刺激に満ちているという。
「どこの国へ行こうと常に正しい時間を示してくれるOCEANUSは強い見方になってくれそうですね」。

スイス・チューリッヒにて、現地の方々にお点前をレクチャー。

フランス、セーヌ川のほとりで現地の茶人たちと野点を楽しむ。

「二刻(ふたこく)」に凝縮される濃密な時間

「お茶会は二刻(4時間)におさめるのが常とされています。挨拶に始まり、炭で湯を沸かし、その間に食事を召し上がっていただき、濃茶、薄茶と続く。人数によってスピードも調整しなくてはならず、亭主はバックヤードで時計をにらみながらタイミングを計っています」。
たとえ半年間の時間をかけて準備をしても、そのアウトプットは4時間に凝縮されるので非常に密度の濃い時間になるという。
「さながら凝縮された“ミニ人生”とでも言いましょうか。お茶会で過ごす4時間は、普段の4時間とは時間の流れが異なります。空間的にも待合いから広い庭に出て、そこから狭い茶室に入る。そこには空間の伸び縮みと、時間の伸び縮みが存在する。死が身近な時代に生きていた戦国武将たちは、今よりずっとその時間と空間に集中して茶席に望んでいたのではないでしょうか。『明日死ぬかもしれない』という彼らの、かけがえのない場所だったはずです。昔の人は珍しい茶器を見たいがために一週間かけて茶会へ足を運び、網膜に焼き付けんばかりに器を観察し、子細にメモを取っていました。今と違って交通手段も乏しければ、カメラもないのですから」。
数百年の時を越え、凝縮された4時間が今もこの茶室で刻まれている。

今に生きる茶人として

「今しか出来ないことをどんどん取り入れていくべきだと思っています。こんな青いバラや、アクリルの茶道具は昔にはなかった。テクノロジーを使った現在だからこそ出来る表現を探っていきたい。そしてもう一方で、学べば学ぶほどにクラシックの強さ、先人たちの偉大さ、自身の勉強不足を痛感します」。
今後の海外での活動について伺うと「海外に行って思うのは『お菓子おいしい』『道具きれい!』とか、そういうことはすぐに楽しんでもらえるけれど、深く理解してもらうのはやはり大変です。「Tea Ceremony」はどんどん国際化していますが、それは表層的にしか伝わっていない。どう伝えれば茶の湯の深さや文化を知ってもらえるのか。どうしたら海外の人により理解してもらえるのか。その国が持っている文化をうまくトランスレートしながら、道を探っていきたいです」そう松村氏は応えてくれた。千利休の時代から繋がる時間軸の上。現代に生きる茶人は、OCEANUSが刻む未来の中に、研ぎすまされた「二刻」をこれからも見つけていくのだろう。

今回OCEANUSのために「青のしつらえ」で、もてなしてくれた松村氏。
ターコイズの石から着想を得た重箱は陶芸家・苫米地正樹氏に依頼して作られたもの。

「かつて千利休は庭の朝顔が見事に咲き誇っていたときに、秀吉を「朝顔の茶会」に誘いました。秀吉が期待を膨らまして庭に訪れると、朝顔はすべてその花を切られている。ですが、茶室に入ると、そこには青紫の見事な朝顔が一輪だけ活けられていたそうです。今回は青いバラを一輪だけ活けています。通常茶道では禁花とされるバラですが、利休と秀吉が残した逸話へのオマージュとして」。

Text: Aoko Umi | Photography: Masashi Nagao

松村宗亮(まつむら そうりょう)

茶道家 / 裏千家茶道准教授

伝統を重んじながらも “茶の湯をもっと自由に!もっと楽しく!” というコンセプトによる活動が共感を呼び、全国の百貨店やギャラリーまた海外(ベルギー スペイン アメリカ フランス ポーランド スイス 韓国等)や首相公邸からも招かれ多数の茶会を開催。 伝統文化によるチャリティイベントを主催するなど、日本文化の新たな伝統の開拓・発信に努め幅広く活動中。 過去出演メディア J-wave 婦人画報 NEWSZERO TEDx等多数。

茶道教室 SHUHALLY

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