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“住む”を進化させる、
不動産の新概念とは
東京R不動産 ディレクター 林 厚見氏

“住む”を進化させる、不動産の新概念とは
東京R不動産 ディレクター 林 厚見氏

東京R不動産をご存知だろうか。インターネットを媒介に不動産の見方や価値観を大きく変えたと言われるプロジェクトだ。そのファウンダーの一人であり、自らも建築デザインのバックグランドを持つ林厚見氏に、住むという人間の基本欲求はどう変わっていくかを伺った。
「まず前提として、どこに住むかとか、どんな風に住むかという妄想は大好きですね」。
そこから始まるのか。
「・・と考えた時に、これまでに不動産屋さんって貸主や売主の都合で物件を考えていて、実際にそこに住む人の潜在的なイメージに応えようとはあまりしてこなかったんじゃないか。そこから考えれば新しい価値概念が生まれるのではないか、というのはきっかけとしてはありました」。
それだけなのだろうか?
「自分はニューヨークで暮らしたこともあって、向こうではトライベッカやミートパッキングだ、ブルックリンだと、それまで価値を低く見られていた場所や倉庫のような空間にアーティストたちが住み始めることから街の価値が上がっていくようなことを目の当たりにしてきました。ところが日本ではどうだったかというと、旧態依然とした不動産業があったので、面白い住み方をしたい人はいるのに、売り手がそこには応えていなかった。そこに勝機はあると思ったのです」。

新築 vs リノベーション

林氏は今の日本の不動産事情をこう分析する。
「優秀な建築家やデザイナーはたくさんいるのに、街の景色を見るとめちゃくちゃツマラナイ建物が並んでいますよね。これはどうしてかと考えると、売り手にクリエイティビティが不足していたのと同時に、一方では日本の多くの人が不動産を資産として捉える面が強くて、そこでの生活に自分で想像をふくらませることが少なかったことにもあると思います。そこで価値観に刺激を与える仕掛けとメディアという意味で東京R不動産が生まれ、リノベーションという考え方も提示していく意味があると考えました」。
かつて中古というマイナスのイメージがあったものが、リノベーションによって新しい価値を持つ時代。
「まさに所有から利用、モノから体験へと時代のコンテクストが変化しています。それは経済的な事情から生じているのではなく、もっと本質的なものでしょう」。
これ以上モノを増やすべきじゃないという地球のサインを人々が本能的に感じ取っていると林氏は考える。
「自分たちは不動産という世界をスタートにしましたが、それは取りも直さず、どう生活を楽しむかということの大事な部分を担っていると思っています。一方、建築という領域から見ていくと、今でも魅力を放っているヴィンテージマンションなどは、設計した建築家の魂のようなものが込められています。今のタワーマンションなど多くの建物はマーケティングでかたちが決まっているので、スペックや機能は満たされているんですが、精神的に豊かさを感じるかというと疑問です。無意識的であっても、何か感性を満たす体験があるかということに人々が反応するということは必ずあるのではないでしょうか」。

所有することに価値があるのではなく、体験することで得られる価値。それはOCEANUSにも相通じる価値ではないかと手前味噌ながら感じてしまう。時間を体験するということ。その変化の中で自らの日々をもう一度捉え直してみたいと思う。

Text: Y.Nag | Photography: Yuuko Konagai

林 厚見(はやし あつみ)

SPEAC共同代表 / 東京R不動産ディレクター

1971年東京生まれ。東京大学工学部建築学科(建築意匠専攻)、コロンビア大学建築大学院不動産開発科修了。経営戦略コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー、国内の不動産ディベロッパーを経て現職。 物件サイト「東京R不動産」、「R不動産toolbox」のマネジメントのほか、建築・不動産・地域等の開発・再生や新規事業のプロデュースを行う。共編著書に『東京R不動産2』『だから、僕らはこの働き方を選んだ』『toolbox 家を編集するために』『2025年の建築 新しいシゴト』等。

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