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言葉の海で時代を紡ぐ、
新世代の詩人
詩人
菅原 敏氏

言葉の海で時代を紡ぐ、新世代の詩人
詩人 菅原 敏氏

詩人という存在は不思議だ。我々一般人と最も遠いところに存在するかのようだ。しかも、このインターネットの時代に、かつての詩人のイメージとはちょっと違う、しかし確固とした存在感を放つ詩人が、菅原敏氏だ。
「かつて吟遊詩人たちはその声で詩を伝えてきましたが、寺山修司は活版印刷の発明によって『詩人は猿ぐつわをされた』と言っていました。いまネットの時代になり、その猿ぐつわを外す方法は様々にあるのではと考えています」。
事実、菅原氏はYouTubeで“詩人天気予報”を発表したり、WEBマガジンで朗読コンテンツを発表したりとWEBメディアを駆使した活動を行っている。

「インターネットだけでなく、自分自身の活動は、“詩”を街のあちこちに息づかせることだと考えています。詩情とかポエジーという言葉があるように、実際の“詩”を日常の中で楽しんで欲しい。その考えの源流は、かつてビートニクスの詩人たちの活動ともシンクロします。アレン・ギンズバーグやジャック・ケルアックのように」
街の中の“詩”。それは東京芸術大学とのコラボレーションでの実験的な作品にも見られるし、ミュージシャンのジャズをバックに詩を詠むポエトリーリーディングにも菅原スタイルが息づいている。

「これは東京芸術大学 大学院デザイン科(視覚伝達研究室・企画理論研究室)との共同プロジェクトです。MOZというタイポグラフィーの雑誌の巻頭企画として、『詩を街に連れ出す』をテーマに活版印刷の工房をリヤカーで引きながら方々で詩を読み、それを売り歩くというもの。さながら豆腐売りのように街で詩を売る。キャンバスに判を押し、一連の詩を街中に置いていくというビジュアル制作を研究室の皆さんと行ってきました。詩を持って街に出る。詩のない所に詩を運ぶということが、自分の詩と時代の関わりだという認識があります」。
事実、菅原氏はデパートの館内放送で詩を朗読したり、カフェで朗読会をしたりする。
「古今東西の恋愛詩を今の自分の言葉で超訳する連載もやっています。小野小町や在原業平の詩も今の言葉にすると、恋愛に対する人の想いは変わらないことに気づいたりします」。

今は谷中に居を構え、詩人としての生活を謳歌しているかのような菅原氏。
「取り戻せない過去を取り戻すことを諦めない。それが私にとって詩を書くということです。ある意味、時計を逆回しにする作業に似ているかもしれません。正確無比なOCEANUSはその意味で、私に新しい詩作のヒントを与えてくれるかもしれません。それと“青”。“青”でいつも思い出すのがイヴ・クラインです。生涯にわたり青をテーマに作品と向き合ってきた美術家。自ら“インターナショナル・クライン・ブルー”と呼ばれる顔料を開発し、コンセプチャルな作品を残してきた彼の“青”に大きな詩情を感じます」。

過去・現在・未来。時間と向き合いながら、どこかで時間をアップデートしていく。詩人・菅原敏は日本の言葉とともに進化していくのだろう。

最後に、今回のBLUE MOTIONSのために菅原氏から届いた詩を紹介する。

あの日 ともだち三人と
空の青 海の青 陸の青
世界の青を三つに分ける
ひみつの約束したわけは
何かひとつの永遠を
手に入れておきたかったから

あの日 海を選んだ私は
戻れぬ過去をたぐりよせ
触れぬ未来に手を伸ばす
時計の針をぐるぐると
しずかな青を手に入れて
今日のページにインクを落とす

「世界の青を三つに分ける」

2016/6/3/19:51
イブ・クラインに思い馳せつつ_菅原 敏

Text: Y.Nag | Photography: Masashi Nagao

菅原 敏 (すがわら びん)

詩人

アメリカの出版社PRE/POSTより詩集『裸でベランダ/ウサギと女たち』で逆輸入デビュー。新聞や雑誌への寄稿・執筆のかたわら、スターバックスやビームスなど異業種とのコラボレーション、ラジオやテレビでの朗読、デパートの館内放送ジャックなど、幅広く詩を表現。Superflyへの作詞提供、メディアプロジェクト『詩人天気予報』、美術館でのインスタレーションなど、アートや音楽との接点も多い。雑誌『BRUTUS』で連載中の「詩人と暮らし」ほか、WEBメディアでも連載を行う。

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連載 『新訳 世界恋愛詩集』

連載 『詩的東京23区』

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