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最上の“もてなし”で、日本のレストランの未来を担う
フレンチレストラン Crony ディレクター小澤一貴氏

最上の“もてなし”で、日本のレストランの未来を担う
フレンチレストラン Crony ディレクター 小澤一貴氏

「あのシェフがやっているレストランに今度行ってみよう」。ここ日本では、シェフの名前でレストラン選びをする傾向がある。それ以外になにがあるの?という声が聞こえてきそうだが、欧米ではディレクトール(支配人)やメートル(フロアマネージャー)とシェフ、つまりフロアとキッチンは対等であるという考え方が一般的に認知されている。要するに“レストランで食事をする”ということは、ただ食べることだけではなく、“どういった環境の中で、サービスを受けるか”ということも重要なポイントの一つの証であろう。チップサービスという慣習のない我々日本人には、なかなか理解することが難しいかもしれないが。そこで今回は、10年連続でミシュラン3つ星を獲得しているフレンチの名店・カンテサンスの総支配人を務めたのち、昨年末に自身のフレンチレストラン“Crony(クローニー)” をオープンさせた、もてなしのスペシャリスト小澤一貴氏に、レストランにおける人との関わり方や接し方の極意を伺った。

現実の中の非現実を提供するための心構えとは

「どんな仕事でも、“今日の自分より明日の自分”と同じで、今日の店より明日の店の方が良くなくてはいけないと、常に感じて仕事をしています。今よりも良くしていくことが、いただいた星を守り続けるためへの近道ではないか、というシンプルな考えを基本とし、そして大切にしています」。
現状に満足してしまっては、さらなる高みに到達しないという当たり前な考え方。分かってはいても、それを日々こなすということは相当な覚悟が必要だ。次なる目標を自ら掲げ、達成し続けることで、現実の中にある非現実の空間は創り出されているのだろう。

もう一度お店に足を運んでもらう努力と工夫

「誰が担当して、どういう物を褒めてくれて、何があまり好みではなかったかをしっかりと記憶するというのは当たり前のことなのです。そこにもう一歩踏み込んで何が重要かというと、食事中の会話のテンションや、料理を口にした時の表情を見逃さないで観察すること。つまり、言葉以外の部分に細心の注意をはらい、感動を与えることで100点から120点に持っていくことが可能となっていくのです。それをデータとして蓄積していくと、もっといいサービスが次の時に提供できると思っています」。
小澤氏にとって100点は当然のこと、もっと言ってしまえば平均点でしかなく、一流のもてなしをするためには、相手の気持ちを深く確実に酌み取る作業が必要となってくるのだ。
「お客様が店に来た瞬間からではなく、ある意味お客様から予約の電話を受けた時点で勝負は始まっています。店に普通に予約の電話を掛けてきたのか、それとも私を指名して掛けてきているのかでもまず大きな違いです。そこでの声色である程度の予測を立て、同じお客様でも来店時のお相手や、シチュエーションに対応しやすく準備することがより良いサービスに必要なのです」。

シェフとは違う、サービスの側面からレストランを支える必要性

「海外のレストランに行った時に感じたことがすごくあって。それは、日本でのサービスマンの地位の低さです。それでもソムリエという仕事は、20年ほど前から認知はされ始めましたが、メートルやディレクトールという仕事はまだまだ認知されていません。やっている側の人間もプライドを持って、もっと前に出ていこうという人間が少ないのも事実です。分かりやすい例は、シェフの名前は知っていても、サービス側の人間の名前は知らないですよね。そこに疑問を感じ、自分は一流のサービスを武器にもっと前に出ていくことで、ついてきてくれている他のサービスマンにも誇りを与えていきたいのです。そうすることで、日本のレストラン自体のクオリティーが上がるとも信じています」。
企業に例えた時、開発部や製造部はあるが、営業部やPR部などがないというのが、今の日本のレストランには多く見受けられるということ。すべてのバランスを取り記憶に残る最上のもてなしを提供することで、日本のレストランの未来を切り拓いていく。やっていることに“誇り”を持つ。これは、けしてレストラン業界に限ったことではなく、我々すべてに通じるメッセージなのかもしれない。
いいレストランとは「最適な距離感が取れて、また会いに行きたくなる店」だと小澤氏は言う。その真意は、いかにお客様の求めるものを汲み取り、その責任を担う覚悟が瞬時にできるかということだと感じた。OCEANUSもまた、時計が果たすべき役割の先にある最上のもてなしを目指し、日々進化をし続けていくことであろう。

Text: Tatsuya Nakamura | Photography: Masashi Nagao

小澤一貴 (おざわ かずたか)

Crony / ディレクター

1974年、神奈川県生まれ。1994年から【APICIUS】で8年間フランス料理の基礎を学びメートルドテルに。2002年「Four Seasons Hotel丸の内」のメインダイニング【EKKI】のメートルドテルを経た後、レストラン開業コンサルティングに携わる。2005年にワイン輸入会社へ入社し、輸入アイテムの選定やワイン造りに従事。2007年、10年連続ミシュランガイドで3つ星を獲得し続ける【Quintessence】ディレクトールに。2016年12月に【crony】をオープン。

Crony

営業時間:18:00~翌2:00

住所:東京都港区西麻布2-25-24 NISHIAZABU FTビル MB1F

定休日:日曜

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