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数寄屋大工から始まり世界へ向かう、
日本建築の新しい波
建築家・美術家 佐野文彦氏

数寄屋大工から始まり世界へ向かう、
日本建築の新しい波
建築家・美術家 佐野文彦氏

正確に佐野文彦氏をカテゴライズするのは難しい。
「建築家・美術家としておいてください」。
そう本人がおっしゃるのだが、ちょっとそれでは足りない気もする。それ以上にご本人のこれまでの経歴が多くのことを語ってくれているように思う。
「高校時代は陸上に明け暮れ、それに行き詰まって、今度は競輪選手を目指しました」。
そこから現在までの道のりは実に異色だ。
「競輪選手への道もあと少しというところで挫折し、さてどうしようかという時に、毎日通る交差点に建つ建物が気になり、恐る恐る入ってみたんです」。

ぺろすけん家 [PEROSUKE`S HOUSE]

入ってみるとそこは北欧家具やミッドセンチュリーの本物を扱う家具屋で、しかもその経営者は工務店を営み、自らが建てた家にその家具たちを納品していたという。
「もともとアートやデザインが好きだったのもあり、20歳という若さも手伝ってか、その家具屋にアルバイトで入り、さらに工務店の親方に頼み込んで住み込みの大工見習いになったんです」。
その工務店というのが、なかなかすごく、ジョン・レノン邸、ロックフェラー・ジュニア邸、伊勢神宮茶室、松下幸之助邸などを手がけ、大徳寺や裏千家、表千家にも出入りし、設計者も磯崎新、黒川紀章、吉村順三、I.M.ペイなどそうそうたる面々。
「ここでなら学校へ行くのとは違うものを学び建築家になるという道を切り開けるんじゃないかと」。
こともなげに語る佐野氏だが、全く見ず知らずの世界に飛び込む勇気。
「修行時代は辛かったと言えば辛かったのですが、数寄屋造の大工としての基本を教わったことが今の自分を作っているのだと思います」。
数寄屋造という日本建築の粋を学び、素材とその組み立て、そこから生まれる空間へのセンス。佐野氏の作品に共通している“日本”には確かな背景があるのだ。

(c)「玄象庵」2011 / neutron tokyo

日本を考え世界へと向かう

「修行が開け、いざ独立というときに親方に建築家になりたいと申し出て工務店を辞し、小さな仕事を始めました。そして26歳の時に旅に出たんです」。
京都から世界へ。14カ国、行けるだけ行こうと。その旅先で出会う建築に触れるたびに、日本のそれも数寄屋造の素晴らしさを再認識したのだろう。
「帰国し、幾つかの建築事務所で働き退職後、今度は海外に住むことを考えました。そしてサローネを見た後、デンマークで家具を作りつつ、いろいろな建築やアートを見ながら数か月を過ごしました。その時、自分がしたかったのは機能としてだけの建築ではなく、本質的な空間を作るということだと思い出しました。そしてそれは茶室にも言える事ではないか、私だからできる表現はそこにあるのではないかと考えるようになりました」。
そして独立。折しも陶芸、茶道が再び注目を集め始め、陶芸の展示会でのインスタレーションとして茶室を造設したりと、それまでの思いが具体的になってきたという。そんな時、パリで日本古来の「折型」の店を作ることに。そのため、岐阜に檜を探しに出かけその木材を日本から輸出し、さらに石を選び世界から見た日本の“間”を追求したのだという。

フランス パリ MIWAの外観(上) と内装(下)

「この仕事が自分にとってのひとつのターニングポイントになりました。他のデザイナーや建築にできない何か。それは大工としての経験を生かし技術や素材を使うこと。物事を実寸で考えることが他の誰にもできない、自分らしさなのだと。それと同じように、数寄屋大工という自分の出自も含め、技術や文化を未来へとつなげたり、変化し続ける現代に対してどう進化させるかということが自分に与えられた課題だということも見えてきました」。
佐野氏は現在も数多くのプロジェクトを手がけながら、自分自身の作品としてのインスタレーションも発表している。

「これまでもG-SHOCKを海外には必ず着けて行ったのですが、このOCEANUSはより質感も良く高機能なので、自分のこれからにふさわしい時計だと感じています」。
佐野氏の今後は日本の伝統をベースにしながら新しい日本の造形を生み出そうとしている姿に他ならない。そのすべてのベースにあるのは、佐野氏の太い腕と大きな手から生み出される感覚だ。その左腕に収まったOCEANUSは氏とともに、これから日本の新しい伝統を世界へとつなげるパートナーとなってくれることだろう。

Text: Y.Nag | Photography: Masashi Nagao

佐野文彦
[studio PHENOMENON]

建築家/美術家

1981年奈良県生まれ。京都、中村外二工務店にて数寄屋大工として弟子入り。設計事務所などを経て、2011年佐野文彦studio PHENOMENONを設立。大工として、技術や素材、文化などと現場で触れ合った経験を現代の感覚と合わせ未来への新しい日本の価値観を作ることを目指してデザインやインスタレーションを手掛けている。

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