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アーティストから大学教員へ。 その変化は何を産むのか

篠田太郎氏(東京藝術大学 准教授)

篠田太郎。その名前を聞いて即座に彼のことを知っていると答えられる人は、現代アートにかなり詳しいと言える。彼は、UAEのシャルジャ、シドニー、イスタンブールなど世界の名だたるビエンナーレやトリエンナーレというアートフェスティバルに招待され、彼にしかできないインスタレーションを展開している。世界的に評価を得てはいるが、日本での知名度は驚くほど低い。
そんな篠田氏が突如、東京藝術大学の准教授に就任した。
「これまで給与生活をしたことがなかったので、一度くらいは、というのは冗談ですが、年齢を重ねて自分なりに結果を出してきて、どこかに腰を落ち着けて自身の研究と同時に、若い世代とも色々な意味で闘ってみたいという想いがあり、応募しました」。

まったくのフリーランスのアーティストから藝大の教員へ。その転身の意味は思いの外、深いものがある。現在、美術学部 絵画科 油画を受け持っている。
「僕自身は油絵の作家ではないのですが、アートにとって何が大切なのか、その自分自身の表現の核となるコンセプトをどう見つけるかを教えていると言ってもいいでしょう。今後海外の大学とも共同で、アートの新しい可能性を探っていこうという試みも始まっており、海外での自分の作品の展示以外にもますます海外との行き来が増えそうです」。

Lunar Reflection Transmission Technique performance with Uriel Barthélémi  Courtesy Sharjah Art FoundationLunar Reflection Transmission Technique performance with Uriel Barthélémi Courtesy Sharjah Art Foundation

courtesy 20th Biennale of Sydneycourtesy 20th Biennale of Sydney

Courtesy Sharjah Art FoundationCourtesy Sharjah Art Foundation

概念の構築こそがアートの原点となる

篠田氏の作品はダイナミックかつコンセプチュアルなものが多い。
「海外での評価の根底には、僕自身が作品に込めている“無常観”というのが影響しているかもしれません。西洋文明はパルテノン神殿やピラミッドにしても、ハードウェアとして歴史を残そうとします。ところが日本ではハードではなく、“ソフトウェアとしての概念”を残すことで永遠を実現しよう考えています。その背景にあるのが時間の概念の違いではないかと。日本人から見て、時間の概念は、そもそもディメンションの概念が違うと言えます。世界では1次元が線で、2次元が面、3次元が立体、4次元で時間が加わります。ところが、日本の元々の概念は西洋で考えられる複数のディメンションが一つになっている。次元という概念が一つに集約されているんです。龍安寺の石庭などはその典型と言えます」。
時間に関しても独自のアーティスティックな視点を持つ。
「時計があって初めて1秒、2秒という感覚を持てます。ただ未来へ向かって歩くということではなく、常に未来へ向かって後ろ向きに歩いているようなものとして時間を捉えてもいいのではと考えます。なぜなら、過去に起きた事実は見ることができますが、未来の事実は見ることは不可能だからです」。
あらゆる事象を概念としてどう捉えるか。篠田氏の頭の中は、常にあらゆる事象と真っ直ぐに向き合っているかのようだ。
「学生にも作品を作ることを優先するなと教えています。一つの概念を構築して、それを作品にするためには、その考え方をあらゆる方向から検討を重ねて、全てを検証してベストな方向を選んでいるのか?そこが何より大事だと考えています。そうでなければ、意味のあるアートは生まれないはずです」。

「サイエンスは最終的にネイチャー=自然が結論を評価しますが、アートは人間がジャッジする。その意味でもアートの評価というのはいつ出るかわかりません。100年後かもしれないし。そう考えると、学校で教えるべきことは何か、というのを自問自答します。そのため学校で教えるというよりは、学生と対話をしながら、自分自身も作品の評価に参加し、さらに学生より先へ行こうと切磋琢磨せざるを得ない」。
共に学び、共に進化するという。
「僕自身の作品の多くに、時間を細かく実験することがあります。その意味でも、このOCEANUSという時計が内包する様々な機能は面白く感じています。それに今年は教員としても何度か海外へ出向くこともあり、また海外のアート展への出品もあるので、いつどこにいても自分の時間を把握できるという意味は大きいですね」。

アート、時間、次元、100年…。篠田氏の話は作品のダイナミックさを超えるほど興味深く、新しい藝術大学の教員という氏のNEXTがどう展開され、変化していくのかを注視せざるを得ないと感じられた。

Text: Y. Nag | Photography: Masashi Nagao

篠田 太郎 (しのだ たろう)

1964年東京生まれ。東京を拠点に壮大なスケールで実験的なアートプロジェクトを得意とする現代美術家。今までに釜山ビエンナーレ(韓国/2006年)、イスタンブールビエンナーレ(トルコ/2007年)、シャルジャビエンナーレ(UAE/2015年)、ルイジアナ芸術科学博物館(USA/2015年)、シドニービエンナーレ(オーストラリア/2016年)など国内外の名だたるアート展や美術館でのプロジェクトや展示での参加に加え、ロサンジェルスのREDCAT(USA/2005年)や森美術館(日本/2010年)、シャルジャの砂漠(UAE/2016年)等で個展を開催している。2017年より東京藝術大学 美術学部 絵画科油画 准教授に就任。現代美術家として世界を舞台に篠田ワールドを表現しつづけている。
ウェブサイト: http://www.misashin.com/artists/shinoda-taro/

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